プラトン『ソクラテスの弁明 クリトン』あらすじと感想~ソクラテス・プラトン師弟と法然・親鸞師弟の類似に驚く・・・

プラトンが『国家』を書いたのは、尊敬する師ソクラテスが不当に処刑されてしまったことに対する反発からでした。

そしてそのソクラテスがなぜ処刑されねばならなかったのかについて書かれているのがこの『ソクラテスの弁明』という作品です。

親鸞自身もプラトンと同じように、尊敬する師が理不尽にも処罰を受けなければならないのを身をもって体感しています。

親鸞もそうした理不尽に反論するために主著『教行信証』を書いたという側面があります。

プラトンと親鸞が体験した「無念」という共通点が私にはドキッとくるものがありました。

プラトン『国家』あらすじと感想~エリートによる国家運営の原型。ここからすでに管理社会は始まっていた

私が今回この本を読みたいと思った最大の理由は彼の国家観がユートピア思想の先駆けともいえるものだったという点にあります。

プラトンの『国家』がヨーロッパ人の精神に多大な影響を与え、後のトマス・モアの『ユートピア』につながり、そこからさらに空想的社会主義者たちやマルクス、レーニン、スターリンの世界にも繋がっていくというのは非常に興味深いものがありました。

かつては挫折したこの本ですが、やはり「今読まねばならぬ」という目的意識があると全然違ってきますね。

「目的があること」は読書における良いスパイスであることを実感した読書になりました。

トマス・モア『ユートピア』あらすじと感想~ユートピアの始まりからすでにディストピア?

「ユートピア」という言葉は現代を生きる私達にも馴染み深い言葉ですが、この言葉を生み出した人物こそこのトマス・モアです。

ユートピアでは一日の仕事は6時間でそれ以上は労働することはありません。ですが仕事を含めた一日のスケジュールが徹底的な監視の下管理されるという、これが私たちの感覚で言えばなかなかのディストピアっぷりなのです。まさに『一九八四年』のビッグブラザーそのものです。

そうです、ユートピア小説はその始まりからしてディストピアだったのです。これは読んでいて驚きでした。

『じゅうぶん豊かで、貧しい社会』~資本主義と脱成長、環境問題を問う名著!『人新世の資本論』を読んだらこちらもおすすめ

この本は単に「資本主義が悪い」とか、「資本家が搾取するから悪いのだ」という話に終始するのではなく、より思想的、文学的、人間的に深くその根源を追求していきます。これがこの本の大きな特徴であるように思えました。

斎藤幸平著『人新世の資本論』に魅力を感じた方にはぜひ、あえてこの本も読んでみることをおすすめします。読んでいない人にもぜひおすすめしたい面白い本です。資本主義、マルクス主義だけではなく、「人間とは何か」ということも考えていく非常に興味深い作品です。

『グローバル経済の誕生 貿易が作り変えたこの世界』~世界市場の歴史を知るのに最適な1冊!マルクス主義を学ぶためにも

マルクス主義においては、「資本主義がこんな世界にしたのだ」と述べられることが多いですが、この本を読めばことはそんなに単純ではないことに気づかされます。

たしかに「資本主義」が多大な影響を与えているのは事実です。ですが個々の場においては様々な事情や要因が働いて社会は成り立っています。単に「資本主義がすべて悪いのだ」で止まってしまったら重要なものを見落としてしまいかねません。

世界は複雑に絡み合って成り立っていることをこの本では学べます。

幅広い視野から貿易の歴史を知ることができるおすすめの1冊です。

ロバート・オウエン『オウエン自叙伝』~イギリスの空想主義的社会主義者の第一人者による自伝

社会主義者というとマルクスやエンゲルスなどのイメージで革命家とか経済学者、哲学者のイメージがあるかもしれませんが、オーウェンは全く違います。彼は根っからの商人であり、実業家でした。

彼が自分の工場でなした改革は今でも評価されるほど人道的でした。

資本家はあまねく強欲であり、労働者を搾取する悪人だという考え方には明らかに収まりきらないものがオウエンにはあります。

この『オウエン自叙伝』ではそんなオウエンがなぜそのような思想に至るようになったのか、彼の原動力とは何だったのかを知ることができます。読めばきっと驚くこと間違いなしです

ユートピア社会主義者フーリエとドストエフスキー~なぜドストエフスキーはフーリエに惹かれたのか

この記事では空想的社会主義者フーリエとドストエフスキーのつながりについて考えていきます。

私の中で「これは」と思った3つのポイントがこちら。

1 フーリエの美的センスとクロード・ロラン

2 フーリエのほとんど狂気じみた同情の能力

3 フーリエの著述の才能~圧倒的なファランジュ(ユートピア)の描写力

これらがドストエフスキーがフーリエに惚れ込んだ背景としてあったのではないかと私は感じました。

また、ドストエフスキーをはじめとしたロシアの青年たちがフーリエ思想をキリスト教の延長として見ているのは非常に興味深い点だと思います。

ジョナサン・ビーチャー『シャルル・フーリエ伝 幻視者とその世界』~フーリエのおすすめ伝記!

この作品は通俗的に書かれたものではなく、学問的研究にもたえうるものとなっています。かといって学術的すぎて一般読者にはさっぱりわからないという類の本でもありません。

私自身、楽しみながら読むことができましたし、意外な事実に驚くことが何度もありました。特にマルクスを学ぶためにフーリエを読もうとしていた私でしたが、ドストエフスキーとの関係性には何度も驚かされました。

この本では直接ドストエフスキーについての言及はありませんが、読んでいてドストエフスキーがフーリエのどこに惹かれたのかが何となく見えてくるような気がしました。

石井洋二郎『科学から空想へ よみがえるフーリエ』~ユートピアを描いた有名な空想的社会主義者フーリエとは

フーリエについての参考書はほとんどなく、私達が手に取れるものは限られています。ですがその中でもまず入門として読むにはこの本はおすすめです。フーリエ自身が非常に難解な人物でありますので、この本の内容でも難しい部分があるのですが、それでも全体図を知るにはありがたい1冊だと思います。

鹿島茂『渋沢栄一』~サンシモン主義と強いつながり!大河『青天を衝け』でもお馴染み!日本経済を支えた偉人のおすすめ伝記!

もし日本に渋沢栄一がいなかったらどんなことになっていたのか。この伝記を読めばぞっとするような事実を知ることになります。それほど渋沢栄一という存在は巨大だったのです。私もこの伝記を読んで心の底から衝撃を受けました。

現代日本はまさに危機の時代だと私は思います。こんな時代だからこそ、渋沢栄一という人物の成した軌跡を辿るのは非常に大切なことなのではないでしょうか。

この伝記はぜひぜひおすすめしたい名著です。学校の教科書になってほしいとすら思える作品です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。