Dostoevsky

History of the Soviet Union under Lenin and Stalin

神野正史『世界史劇場 ロシア革命の激震』~ロシア革命とは何かを知るのにおすすめの入門書!

神野氏の本はいつもながら本当にわかりやすく、そして何よりも、面白いです。点と点がつながる感覚といいますか、歴史の流れが本当にわかりやすいです。

ロシア革命を学ぶことは後の社会主義国家のことや冷戦時の世界を知る上でも非常に重要なものになります。

著者の神野氏は社会主義に対してかなり辛口な表現をしていますが、なぜ神野氏がそう述べるのかというのもこの本ではとてもわかりやすく書かれています。

この本はロシア革命を学ぶ入門書として最適です。複雑な革命の経緯がとてもわかりやすく解説されます。

Russian History and Culture and Dostoevsky

榎本武揚『シベリア日記』~幕末の函館ゆかりの偉人がロシア・シベリア横断をしていた!

若い頃にオランダ留学を経験し、そこから戊辰戦争の戦いを経て再び外交官としてヨーロッパへ旅立った榎本武揚。

そんな彼が初めて目にするシベリアの風景や産業、人々の生活をこの本では知ることができます。 彼がペテルブルクを出発したのが1878年。この年はドストエフスキー最晩年で『カラマーゾフの兄弟』を執筆し始めた年になります。まさにドストエフスキーがいたロシアに彼はいたのです。

彼の『シベリア日記』はそんなドストエフスキーと同時代の人々の生活を知る格好の資料にもなります。そうした意味でもこの本はものすごく興味深く読むことができました。

函館ゆかりの偉人である榎本武揚のことを知れてとてもありがたい機会となりました。

帝政末期のロシアRussian History and Culture and Dostoevsky

アンリ・トロワイヤ『帝政末期のロシア』~ドストエフスキー亡き後のロシア社会を知るために

この本は小説仕立てで1903年のロシア帝政末期の社会を紹介していきます。

主人公は若いフランス人ジャン・ルセル。彼はふとしたきっかけでロシアに旅立つことになります。私たち読者は彼と同じ異国人の新鮮な目で当時のロシア社会を目の当たりにしていくことになります。

この本ではロシア正教を中心にした宗教事情、そして劣悪な状況で働く労働者、軍隊の内情、農民の生活など様々な事象を紹介しています。

当時のロシア社会がどのようなものであったかを知るのにとても便利な一冊となっています。しかも小説仕立てであるので読みやすいというのも嬉しい点です。

History of the Soviet Union under Lenin and Stalin

Synopsis and Impressions of Gorky's Masterpiece "Dondoko" - The Soul Cries of People Living at the Bottom of the Hill

この作品は劇作品です。しかもこの解説に述べられているようにチェーホフと同じくわかりやすい筋もありません。そのため本としてこれを読んでもなかなかその流れを掴むのが難しいです。私も一度読んだだけではわからず、何度も読み返しました。

この作品もチェーホフと同じく、演劇として舞台で観るときっとものすごいインパクトがあるのだと思います。

この作品はかなりパワーがあります。チェーホフは静かな雰囲気の劇ですが、ゴーリキーはどん底にいる人たちの魂の叫びを表現します。言葉のパワーがものすごいです。本で読むだけでこれですから舞台で聞いたらこれはものすごいものなのではないでしょうか。

History of the Soviet Union under Lenin and Stalin

Criticism of Dostoevsky by leading Soviet writer Gorky

前回の記事「『スターリン伝』から見たゴーリキー~ソ連のプロパガンダ作家としてのゴーリキー」でお話ししましたように、ゴーリキーはソ連を代表する作家であり、スターリン政権下ではソ連のプロパガンダの宣伝にも大きな役割を果たしました。

そのゴーリキーがドストエフスキーのことをどう言うのか。

これはすなわちソ連がドストエフスキーをどう見るかということにもつながっていきます。

というわけで、佐藤清郎氏の『ゴーリキーの生涯』の中にゴーリキーがドストエフスキーに言及している箇所がありましたのでこの記事ではそちらを見ていきたいと思います。

History of the Soviet Union under Lenin and Stalin

Gorky from "Biography of Stalin" - Gorky as a Soviet Propaganda Writer

『スターリン伝』で読んだゴーリキー像は佐藤清郎氏の『ゴーリキーの生涯』とはだいぶ違った姿でした。

とは言え、ゴーリキーが幼い頃から苦労し、作家となってからも自身の考える理想を追求していたのも事実です。そしてロシア革命後にはレーニンの独裁に反対し、国も去っています。ですので、佐藤清郎氏によって書かれたゴーリキー像もそういう点では間違いではないと思います。

ただ、スターリンがあまりに狡猾だったということが言えるのではないでしょうか。ゴーリキーを自身の手元に置き、利用した。それも自身の意図に気づかれることもなく、ゴーリキーがスターリンのソ連が素晴らしいものだと思い込むように仕向けた。このスターリンの手法は恐るべきものだと思います。

History of the Soviet Union under Lenin and Stalin

佐藤清郎『ゴーリキーの生涯』~ソ連を代表する作家の波乱万丈な人生を知るのにおすすめの伝記

この本ではゴーリキーの人生が幼少期からかなり詳しく書かれていますが、公的記録が乏しい若きゴーリキーに関してはその多くの部分がゴーリキー自身によって書かれた自伝的小説が基になっています。ですのでゴーリキーをもっともっと知りたい方は『人々の中で』など、自伝的小説を読むのをおすすめします。

ゴーリキーが幼少の頃からいかにとてつもない生活を送っていたかがこの伝記では明らかになります。

彼の代表作『どん底』はまさしく彼自身が社会のどん底で生き抜いた経験があったからこそでした。そこから作家として大成するというのは驚くべきことです。この伝記を読んで本当に驚きました。並の人物ではありません。

History of the Soviet Union under Lenin and Stalin

Gorky and Dostoevsky, leading writers of the late imperial and Soviet periods

ドストエフスキーは『悪霊』や『カラマーゾフの兄弟』で社会主義思想によって人々の自由が失われる時代が来ることを予言しました。

そして実際にロシアはその通りになってしまったのです。ドストエフスキーがあれだけ危惧して読者に語りかけていたにも関わらず、そうなってしまったのです。そしてドストエフスキーは国民からもあまり読まれなくなった・・・

これは文学の敗北、思想の敗北なのではないかと私はふと思ってしまいました。いくら文学や思想を述べても、権力や武力で脅されたら私たちは無力なのではないか・・・そんなことを私は感じてしまったのです。

そのためこうした時代を学ぶために、まずはソ連を代表する作家ゴーリキーを読んでみようと私は思ったのでした。

History of the Soviet Union under Lenin and Stalin

The Soviet Union and Dostoevsky - Why I Study the Soviet Union - Future Blog Updates

ドストエフスキーは『悪霊』や『カラマーゾフの兄弟』で来るべき全体主義の悲惨な世界を予言していました

文学は圧倒的な権力の前では無力なのか。思想は銃の前では無意味なのか。

私はやはりソ連の歴史も学ばねばならない。ここを素通りすることはできないと感じました。だからこそ私はドストエフスキー亡き後の世界も学ぼうとしたのでした。

Masterpieces by the great Russian writer Chekhov

What is a truly good book - a masterpiece that survives the ages and becomes a classic - the beloved Chekhov Zola.

今こそチェーホフとゾラを読もう!―時代と世の中の仕組みを冷静に見る視点 これまで当ブログではおよそ1カ月にわたってチェーホフについてご紹介してきました。 ドストエフスキーを学ぶ上では必須という作家ではないチェーホフをここ…