2022年5月

Vermeer, the Painter of Light and the Scientific Revolution

小林賴子『フェルメールとそのライバルたち 絵画市場と画家の戦略』~同時代の画家たちと市場原理から見るフェルメール

この作品はフェルメールが活躍した17世紀オランダの美術市場から彼を見ていこうという異色の作品です。

絵画の本と言えばその絵の特徴や魅力を解説していくのが普通ですが、この本では当時のマーケットからフェルメール作品の特徴に迫っていきます。また、彼の同時代のライバルたちとのつながりからもフェルメールを考えていきます。

いつもとは違った視点からフェルメール絵画を考えていけるのでこれは非常に刺激的な1冊でした。

Vermeer, the Painter of Light and the Scientific Revolution

アンソニー・ベイリー『フェルメール デルフトの眺望』~時代背景と生涯を詳しく知れるおすすめ伝記!

この作品はフェルメールの生涯を詳しく知るのにとてもおすすめな伝記となっています。

『「キャンヴァスに向かう画家を間近に見る思い」と絶賛された評伝』と絶賛されるように、17世紀オランダの時代背景と共にフェルメール周辺の出来事がかなり詳しく語られていきます。しかもそれが読みやすく面白く書かれていますので、フェルメールをもっと知りたいという方にうってつけの伝記となっています。

Vermeer, the Painter of Light and the Scientific Revolution

『VS.フェルメール 美の対決 フェルメールと西洋美術の巨匠たち』概要と感想~比べて感じる名画の魅力!

この作品はタイトル通り、フェルメールと各国の名画を並べて鑑賞し、それぞれの魅力や特徴を見ていこうという作品になります。

この人の作品はどこが魅力的なのか、ただ漠然と眺めるだけでは見えてこないものが他作品と比べて観ることで浮き上がってくる。

そうした体験をこの本では味わっていくことになります。

雑誌大の割と大き目なサイズの本で、名画たちがカラーでどかーんと見開きで並べられているのはとてもありがたいです。

Vermeer, the Painter of Light and the Scientific Revolution

『中野京子と読み解く フェルメールとオランダ黄金時代』概要と感想~時代背景と歴史も学べるおすすめ解説書!

この本では様々な観点からフェルメールの生きた時代を見ていきます。

そしてフェルメールの絵だけでなく、ほかの画家による絵も参考にしていくところも特徴的です。

絵の解説に加えて時代背景や当時の出来事が語られていくのですが、面白くてあっという間に読み終わってしまいました。これは素晴らしい本です。読みやすさも抜群です。

ぜひぜひおすすめしたい作品です!フェルメール入門にもうってつけな作品となっています。

Tolstoy, the Russian Giant

Tolstoy's "Cossacks" Synopsis and Impressions - Tolstoy's masterpiece middle story about the overwhelming beauty of the Kafkaes! Directly related to that "War and Peace".

『コサック』はトルストイのカフカース体験の集大成とも言える作品です。

カフカースの美しさをここまで表現するトルストイにはただただ脱帽するしかありません。

『コサック』はあの大作『戦争と平和』にも直接繋がっていく非常に重要な作品となっています。

文豪トルストイのスタイルが定まる記念碑的な作品とも言えるかもしれません。

Learn about the life and thought background of Marx Engels

(35)エンゲルスのパリでの矛盾に満ちた私生活とは~マルクス・エンゲルスは本当は何を求めていたのだろうか

前回の記事の最後でエンゲルスの理想が「労働者にもっと貧しく、どん底にいてほしかった」というものだったということをお話しました。

そしてマルクス・エンゲルスが人々の生活が悪くなればなるほど喜ぶような節を見せるのに対し、私が違和感を感じていたこともお話ししました。

彼らははたして本当に労働者のために動いているのだろうか?そう思わざるをえない行動を彼らはこの後も取り続けます。そのひとつの例が今回紹介する箇所になります。

Learn about the life and thought background of Marx Engels

(34) The reality is that Engels' ideal was that he wanted workers to be poorer and at the bottom of the barrel.

今回の記事ではマルクスとエンゲルスの思想において決定的に重要な指摘がなされます

マルクス・エンゲルス関連の様々な本を読んできて、私が薄々感じていた違和感をはっきりと言葉にしてくれたのが今回読んでいく箇所になります。

ぜひ読んで頂きたい内容となっています。

Tolstoy, the Russian Giant

Tolstoy's "The Tale of Sevastopol" Synopsis and Comments - Tolstoy's battlefield reportage in the fiercest battleground of the Crimean War.

トルストイはあのクリミア戦争に従軍しています。そしてそこでの体験をルポ的に書いたもの、そしてそこからフィクションと結びつけて小説化したものが今作『セヴァストーポリ物語』になります。

天才的な芸術家トルストイによって描かれる戦争の実態はすさまじいものがあります。戦場ルポの先駆けという側面もあったこの作品が発表後すぐに大絶賛されたのもわかる気がしました

Learn about the life and thought background of Marx Engels

(33)マルクス『哲学の貧困』とプルードン批判について

プルードンはフランスで活躍した社会主義思想家です。ロシアの革命家バクーニンや、ゲルツェンなどともつながりがあった人物として知られています。

マルクス・エンゲルスも当初は彼の思想に感銘を受けていたのですが、例のごとく、彼らは仲違いし批判し合うことになります。

そしてマルクスが出版したのが『哲学の貧困』というプルードン批判の書だったのでした。

Learn about the life and thought background of Marx Engels

(32) Marx Engels, who at the time of 1845-48 rejected immediate armed revolution

Although Marx Engels has the image of having been willing to resort to armed revolution, he did not approve of the way workers suddenly started an armed revolution in the 1845-48 phase.

マルクス思想の参考書で「マルクスは武力革命に反対だった」という解説がなされるのは、ここに依拠しているのでしょうか。たしかにブルジョワ社会が成熟するまでは労働者による武力革命に反対していたかもしれませんが、彼らが生涯にわたってずっと武力革命に反対していたかは別問題です。この件も今後注意して伝記を読んでいかなければなりません