民衆の古代史

吉田一彦『民衆の古代史』~『日本霊異記』から見えてくる古代の仏教と人々の生活を知るのにおすすめ!

今作は奈良時代の僧景戒によって書かれた『日本霊異記』をもとに当時の人々の生活を見ていく作品です。

本書では奈良時代にしてすでに人々の間で仏教信仰が根付いていたことが明らかにされます。そしてその信仰がどのようなものだったのかということも知ることになります。貴族や僧侶たちではなく、民衆が求めた仏教の救いとは何だったのかということも本書では考えさせられることになります。

日本仏教を考える上でも非常にありがたい作品でした。ぜひぜひおすすめしたい作品です。

聖武天皇

吉川真司『天皇の歴史02巻 聖武天皇と仏都平城京』~奈良時代の歴史と仏教の流れを知るのにおすすめ!

この本の後半で語られる平城京から平安京遷都の経緯の箇所はとても刺激的でした。平城京から平安京への遷都は仏教勢力から距離を置くためとよく言われますが、実際にはそうではなく、天皇の皇統転換が大きな要因だったというのは興味深かったです。

また仏都平城京と政治都市平安京の役目の違いなど、ふだんなかなか考えない視点から奈良、平安時代を見ていけるのも面白いです。

本自体もとても読みやすく、すらすら読むことができました。

奈良、平安初期の全体像を掴むためのおすすめの参考書です。

古代仏教

吉田一彦『古代仏教をよみなおす』~仏教伝来と聖徳太子、天皇と国家について学ぶのにおすすめの参考書!

この本ではまさに目から鱗の興味深い指摘がどんどんなされます。聖徳太子と国家形成の流れや神仏習合についての解説は特にそれが際立っています。ものすごく面白いです。

私は浄土真宗の僧侶です。浄土真宗の開祖親鸞は平安末期から鎌倉時代に生きた僧侶でした。開祖が生きた時代についてはよく宗門の講義や法話でよく聴く機会があるのですが、それよりもさらに遡った奈良平安以前の時代背景や仏教についてはなかなかそういう機会もありません。そんな私にとって日本仏教の礎ともなったこの時代の仏教と時代背景を知れたのは非常にありがたいものがありました。

新アジア仏教史11

『新アジア仏教史11 日本Ⅰ 日本仏教の礎』~日本の仏教受容や聖徳太子についての驚きの事実を知れるおすすめ参考書!

まず言わせてください。

本書『新アジア仏教史11 日本Ⅰ 日本仏教の礎』はものすごく面白いです!

これまで当ブログでは『新アジア仏教史』シリーズの第一弾である『新アジア仏教史01インドⅠ 仏教出現の背景』から何冊も紹介してきましたが、その全てが「え!?そうなの!?」という驚きが満載の参考書でした。

そしてその中でも今作『新アジア仏教史11 日本Ⅰ 日本仏教の礎』はトップクラスに刺激的で興味深い内容が語られていました。

日本仏教の基礎を学ぶ上でこの本は非常に素晴らしい一冊です。ぜひぜひおすすめしたい名著です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

Wu emperor of Liang (China)

MIKUSABURO MORI, "The Wu Emperor of Liang: Tragedy of a Buddhist Dynasty" - Recommended to learn about the good government of a Chinese king who was a devout believer in Buddhism and his tragedy! And the connection with Cloudy Lan.

本書では梁武帝の政治と宗教の問題を詳しく見ていくことになります。武帝は当時としては考えられないほどの善政を行っていました。武帝の仏教的な平和文化路線は明らかに人々の生活を豊かにしました。しかしその善政そのものに国の崩壊の原因があったというのは何たる悲しい皮肉ではないでしょうか。

本書ではそんな武帝の善政と国家の崩壊を詳しく見ていくことになります。上の引用にありましたように、国が滅亡していく様はものすごく悲しくなります。武帝自身も脇の甘さと言いますか、失策がもちろんないわけではないのですがそれでもやはり「歴史のもし」を想像したくなります。

また、今作の主人公梁の武帝は浄土真宗にとっても実は非常に深いつながりのある存在です。そうした意味でも本書はとてもおすすめな作品です。

hato-mara-shi

Yokochao Huiyi and Yoshijun Suwa, "Personages: Buddhism in China, Rashi" - Recommended to learn about the tumultuous life of the translator monk Hatomarai Rashi!

。鳩摩羅什の苦難の人生は有名ですが、そのひとつひとつの苦難をこの本では詳しく見ていくことになります。

後世を生きる私たちは鳩摩羅什や数々の翻訳僧が遺した経典を当たり前のように享受していますが、その翻訳がなされるまでにどれだけの御苦労があったかをこの本では感じることになります。

以前当ブログで紹介した船山徹著『仏典はどう漢訳されたのか スートラが経典になるとき』とセットでぜひおすすめしたい一冊です。

How was the Buddhist scripture translated into Chinese?

Toru Funayama, "How the Buddhist Scriptures were translated into Chinese: When the Sutra Becomes a Sutra" - A stimulating reference book that is also recommended for considering what a sutra is!

古代インドの言葉で作られた経典がいかにして中国語に変換されたのか。

普段なかなか考えることすらない「漢訳の過程」ではありますが、いざその実態を見てみるとこれが面白いのなんの!「ほお!そうやってお経が作られていったのか」と驚くこと間違いなしです。これは刺激的です。

中国仏教や日本仏教を考える上でもこの本は大きな示唆を与えてくれる作品です。

History of Buddhism in New Asia 07

New Asian Buddhist History 07: China II, Sui Dynasty and Tang Dynasty: The Rise and Development of Buddhism" - A recommended work to learn interesting facts about Dōmo and Zendo.

宗教は宗教だけにあらず。当時の時代背景、政治経済、あらゆる要因が絡んで宗教は変化生成されていきます。

中国は特に国家との関係性が強かったという事情があります。では翻って日本はどうでしょうか。

こうしたことを考える上でも本書は非常に良い思考実験になります。

そして本書を読んで一番興味深かったのは中国浄土教の流れが解説されていた箇所でした。特に道綽と善導という浄土真宗でも七高僧として崇められている二人の高僧についてのお話には刺激を受けました。

この道綽、善導の生涯や人柄についてはなかなか知る機会がないのでこの本で語られる内容はとにかく驚きでした

New Asian Buddhist History 06

New Asian Buddhist History 06: China I: Northern and Southern Dynasties: Eastern transmission and reception of Buddhism" - Recommended for a broad study of the introduction of Buddhism to China!

中国に入った仏教は中国人からすると全く異質な存在です。その異質な存在をどう受容するかというのは非常に大きな問題です。

日本仏教を知る上でもこの中国における仏教伝来は非常に大きな意味を持ちます。『新アジア仏教史』シリーズはこれまで見てきたように幅広く仏教史を学べる作品です。今作も中国における仏教伝来を幅広く見ていきますので、中国仏教入門にとてもおすすめです。参考文献も豊富に掲載されていますので今後の学びにも非常に役立ちます。ぜひぜひおすすめしたい一冊です。

New Asian Buddhist History 05

History of Buddhism in New Asia 05: Central Asia: Crossroads of Civilizations and Cultures" - What was the role of Buddhism in the Silk Road region that played a major role in the introduction of Buddhism to China?

当時小学生だった私はアフガニスタンの大仏破壊のニュースを見て「なぜイスラム教の国にあんな巨大な大仏があったのだろう」と素朴にも疑問に思ったものですが、実はアフガニスタンをはじめとした中央アジア地域は仏教が非常に盛んな地域でもあったのでした。

そしてこの中央アジアの文化的影響が中国への仏教伝播にも大きな役割を果たしていたのでした。

Buddhism was not packed up in India and shipped off to China."

私はこの言葉を読んで思わず「おぉ!」と膝を打たずにはいられませんでした。何たるパワーワード!

インドから中国へ仏教が伝来したというと、どうしてもこの「梱包的」なイメージを持ってしまいますが、よくよく考えてみればまさにその通り。当たり前のことのように思えますがよくよく考えるとものすごく深いです。