G. Lefebvre, "1789 - Introduction to the French Revolution" - A great book to learn more about why the French Revolution happened!

Lefebvre (French restaurant chain) French Literature, History and Culture

G・ルフェーヴル『1789年―フランス革命序論』概要と感想~なぜフランス革命は起こったのかを詳しく学べる名著!

本日は岩波書店出版の高橋幸八郎、柴田三千雄、遅塚忠躬訳、G・ルフェーヴル『1789年―フランス革命序論』をご紹介します。

Previous Articleでは神野正史『世界史劇場 フランス革命の激流』を参考にフランス革命の大まかな流れをざっくりとではありますがまとめてみました。

フランス革命は複雑な流れを伴った出来事ではありますが、『世界史劇場 フランス革命の激流』ではそれをわかりやすく解説してくれています。

この1冊があれば大筋を理解する上では十分すぎるほどではないかと思います。

ですが、より深く学ぶにはやはり他の著者によって書かれた違った視点からのフランス革命も見ていくことも重要です。

というわけで今回はフランス革命史の古典とされる G・ルフェーヴル『1789年―フランス革命序論』 を紹介していきます。

Let's take a quick look at the book.

フランス革命は,単一の革命ではない.本書は革命初年の過程を,アリストクラート層,ブルジョワ,都市民衆,農民が,次々と,それぞれの革命を展開してゆく4幕のドラマとして再構成し,革命の政治的・経済的・社会的現実を,具体的に生き生きと叙述する.フランス革命史研究の動向を決定した記念碑的な書である.

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この本の画期的な点は、フランス革命の過程を単純化せず、様々な要因が重なり合って革命が起きていったことをデータを駆使して詳細に解説していくところにあります。

その例をいくつか挙げていきましょう。

まずフランス革命の主要な登場人物である貴族(※アリストクラート、アリストクラシーともいう)でありますが、そもそも彼らを貴族とひとくくりにしてもよいのかという問題提起から始まります。

ひとえに貴族といってもピンからキリまで、様々な人間がいます。

上流貴族と田舎貴族では自ずとその生活も思想も変わってきます。

田舎貴族は貴族という肩書はあれど、どうやらかなり貧しかったようです。

そしてこの本を読んで驚いたのですが、一定数の貴族階級が「国を維持できるならある程度の特権は譲歩してもよい」という態度をしていたということでした。

この体制を維持できるなら多少の損失はやむなし。全てを失ってしまったら元も子もない。

これが特権階級の思惑だったそうです。

上流貴族はともかく、下級貴族は特権が無くなってしまえば生活の手段が失われます。だからこそ過激な社会秩序の破壊は絶対に避けたかったのです。

それが革命の過程を経てゼロか100かのようになってしまい、第三身分との戦いになってしまったのです。

貴族たちの思惑は思わぬ方向へと進んでしまい、革命へと進んで行ってしまったのでした。もちろん、これまで私腹を肥やしてきた特権を守りたいという気持ちも当然あったでしょうが、特権貴族イコール完全なる強欲の化身というわけではなかったようです。彼らも彼らなりに自分たちの生活や秩序を守ろうとしていたことが伺えます。

次にブルジョア階級を見ていきましょう。

彼らはフランス革命を起こす起爆剤となった人たちで、第三身分の代表者であります。

著者のルフェーヴルはここでもブルジョワが様々な職種、立場の人間の集合体であることを示し、それぞれの社会的欲求を解説していきます。

その中でもブルジョワという人達がどのような思想を持っていたのかをまとめた箇所が非常に興味深かったので引用します。

中世においては、教会が、安楽な暮しの追求をとりたてて非難はしないが、死や死後の生活へむけて準備をすべきこと、現世の物質的諸条件はそれ自体何の意味もないこと、そして自己犠牲や禁欲主義に価値があることを強調していた。これは、静態的ともよびうる生活や社会についての考え方であり、技術や科学の進歩は少なくとも魂の救済にとって無用なものとみなされていた。これに対して、ブルジョワジーは、地上の幸福と人間の尊厳を強調し、科学によって自然の諸力を支配しつつ、これを全般的な富の増大へふりむけてゆくことによって、地上の幸福を増加させ人間の尊厳を高める必要性を重視した。彼らは、その実現方法が、個人的利得の誘惑と発見・競争・冒険の魅カとによって刺戟された研究の精神、発明の精神、企業の精神に完全な自由なあたえることにあると信じた。これは、出生の貴賤をとわずすべての人々を、人類の無限の進歩の源である普遍的な競争へとかりたてようとするダイナミックな考え方であった。

岩波書店出版 高橋幸八郎、柴田三千雄、遅塚忠躬訳、G・ルフェーヴル『1789年―フランス革命序論』P98

このような禁欲的な中世の思想を脱した「人類の無限の進歩の源である普遍的な競争」を是とする上昇志向を持った人間がこの時代にはたくさん現れていたのです。

そして彼らの不満はその上昇志向の欲求が満たされないところにあります。

彼らの望む地位は、貴族の肩書もない彼らには手が届かぬものでした。(もちろん、裏道は存在しますが)

ルフェーブルはこの状況について次のように述べます。

戸ロが塞がれているがゆえに、それを打破しようとする思想が生まれる。貴族身分がカーストになり、家柄のある者に公職を独占させようと意図している時、唯一の解決策は血統による特権を廃止して「能力ある者に席を」譲らせることである。もちろん、ここでは自尊心もまた働いているのであり、しがない貧乏貴族が、少しでも差別のふりをするだけで、ブルジョワは、誇りを傷つけられた傷口がうずくのであった。こうして、さまざまな種類のブルジョワの間に、アリストクラシーに共通の憎悪という何者も断ち切ることのできない絆がつくられた。

岩波書店出版 高橋幸八郎、柴田三千雄、遅塚忠躬訳、G・ルフェーヴル『1789年―フランス革命序論』P97

彼らブルジョアは、たしかに「能力ある者」だったのです。彼らには莫大な資産や実務能力がすでにあり、フランス国家や貴族たちは、彼らから借金し、彼らの力を借りないと国の運営が立ち行かなくなってしまうほどでした。

ですが、身分がないという理由で彼らは上には行けないのです。

さらには貧乏な貴族までが当てつけのごとく、侮辱を加えてきます。

これでは憎しみも溜まっていくことでしょう。

ただ、面白いことにそうでありながらも、ブルジョワたちは貴族になりたくて仕方なかったのです。

彼らはその階層の中に成り上がることしか考えていませんでした。

その影響か、ブルジョワ階層の中にも彼らは階級制を持ち出し、自らの家柄を誇り、貴族と同じような階層性にしがみつくことになるのです。

「私はあなたとは違うのよ」

これがすべてなのかもしれません。ルフェーブルも次のように述べてます。

「要するに、ブルジョワジーは高い身分から軽蔑されながらも、自分たちもまたできるかぎりその真似をしていたのである。(P96)」

歴史を学ぶことの面白さは、シンプルな歴史の流れにあるこうした裏の姿といいますか、それぞれの立場や心情にまで思いを馳せるところにあるのではないかとつくづく感じたのでありました。

さて、最後に農民についてお話ししていきます。

農民は前回にも少しお話ししましたように重税でそもそも生きるか死ぬかの過酷な生活を送っていました。

しかもさらにたちが悪いことに、このフランス革命が起こった頃というのは深刻な食糧不足が発生していたのです。

フランスは農業国家です。食糧生産はほとんど自前で、農村からパリへと食料が運ばれてきます。

しかし記録的な不作により食料はほとんど手に入りません。

そうなるとパリの食べ物の値段は必然的に高騰します。

そうするとパリ市民は食料を買うだけで生活費のほとんどを持っていかれます。

となるとどうなるか。

当然、他の出費がどんどん削られていくことになります。

となると今度は景気全体が悪化していきます。なぜなら他のものを買う余裕が人々になくなるので、あらゆる業種においてものが売れなくなるからです。

1789年当時のフランスはもはや食べるものもない大不況です。

だからこそマリーアントワネットがあんなにも憎しみの対象になってしまったのです。

食べるものがないという状況は人々を狂気に駆り立てます。

こういう状況がそろっていたまさにその時、第三身分は「平等と自由、絶対王政の打倒」という錦の旗を振り、民衆を動かしたのです。

このことについてのルフェーヴルの言葉を聞いていきましょう。

この異例の事件は、国民的再生、すなわち人々がより幸福となる新時代が到来するという、あざやかに輝くと同時にどこか焦点の定まらぬ希望を目ざめさせた。この点において、フランス革命は、その開始期について、宗教運動と比較することができる。多くの宗教運動もその創生期には、貧民をして地上の楽園への復帰の約束を期待させたのである。そして、革命的な理想主義がはぐくまれたのは、まさにこの炉床においてである。

岩波書店出版 高橋幸八郎、柴田三千雄、遅塚忠躬訳、G・ルフェーヴル『1789年―フランス革命序論』P176

これは実に興味深い見解です。

フランス革命は宗教の創生期とも比較できるというのです。

たしかに、絶望的な、それこそ地獄のような状況の時にこそ新たな希望は語られます。そしてそのような時にこそ、理想は一層輝き、人々はそれに導かれていきます。

フランス革命も、まさしく人々の絶望的な状況に新たな理想を指し示したのでありました。

もしフランスに食糧危機も大不況もなければ、もしかしたら第三身分の掲げた理想は見向きもされなかったかもしれません。

人々は「理想と平等」を求めていたのではなく「安心して食べて生活できる環境」を求めていたのです。しかしブルジョワたちはうまく煽動し、彼らを味方につけました。王政を打倒すればすべてうまくいくと信じ込ませたからです。

ですが、これが逆にうまくいきすぎ、人々は熱狂と狂気に憑りつかれ収拾のつかない暴動へと繋がっていきます。これは第三身分にとっても想像もしていなかった悩みの種となっていきました。フランスの大混乱はこうして続いていくのです。

さて、かなり長くなってしまいましたがこの本ではまだまだ興味深い事実がどんどん出てきます。

フランス革命は、知れば知るほど面白いです。とんでもなく背景が入り乱れています。

そしてその一つ一つを紐解くことで歴史の流れがまた違った姿を見せてきます。

前回ご紹介しました神野正史『世界史劇場 フランス革命の激流』は革命そのもの流れを知るには最適な一冊でしたが、今回のルフェーブルの著作はそもそもこの革命が起こる背景は何だったのかをさらに詳しく知ることができます。

この2冊の相乗効果は素晴らしいものがあると私は思います。

フランスに興味のある方にぜひおすすめしたいです。

以上、 「G・ルフェーヴル『1789年―フランス革命序論』~なぜフランス革命は起こったのかを詳しく学べる名著!」 でした。

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