Magritte: Life and Works to Know More" - A recommended guidebook for Magritte, famous for his mysterious paintings.

Europe through Classical and Western Art

『もっと知りたいマグリット 生涯と作品』概要と感想~なぜか惹き込まれる不思議な絵画で有名なマグリットのおすすめガイドブック

今回ご紹介するのは2015年に東京美術より発行された南雄介監修・著、福満葉子著『もっと知りたいマグリット 生涯と作品』です。

I have been tracing the history of European music in Hino Madoka's "Composers' Stories" series.

This biography series is a wonderful way to look in detail not only at the life of a composer, but also at the historical background. And it was Mendelssohn that I came across, and from there I became interested in Turner, the great English painter.

and thisTurner's Life and WorksThis is also interesting and makes me want to look at the history, thought, and culture of Europe through paintings.

To be honest, my schedule of reading books has been quite pushed and demanding, but I feel that Tokyo Bijutsu's painting series "ABC Art Beginner's Collection" is perfect for me right now because it is a compact way to learn about painting while being rich in content.

Let's take a quick look at the book.

世界は謎と不条理に満ちている。
絵画を通して観る者の常識を揺さぶり続けた20世紀美術を代表する画家、ルネ・マグリットがついにシリーズ登場!
シュルレアリスム絵画の入門書としてもおすすめです。

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ルネ・マグリットは1898年生まれのベルギー人画家で、この本の表紙にある絵のように、独特な奇妙な絵が有名です。ここでマグリットの絵をたくさん紹介できればよかったのですが、マグリットは1967年に亡くなったということで日本では著作権の問題上まだここでは掲載できません。

ただ、このガイドブックを読んで私は衝撃を受けました。

私がマグリットで知っていたのはこの本の表紙にもなっている『光の帝国』だけでした。

私はこの絵がなんとなくお気に入りで、これが表紙になっていたからこそこの本を手に取ったのですが、彼の他の作品を見てそれこそ度肝を抜かれました。「何だこれは・・・!?」と思わずにはいられない奇妙な絵の数々。ですがなぜか目を離せない・・・!知らないうちにその魅力に惹かれ、はまっている自分がいました。

何かよくわからないのですが「一度食べたら病みつき」のような、そんな魔力がある作品たちでした。

この本はそんなマグリットの生涯と作品の解説をじっくりと見ていくことができます。解説もとても面白く、それこそ食い入るように読み込んでしまいました。東京美術さんのこの『もっと知りたいシリーズ』は私も大好きでどれも楽しく読ませて頂いているのですが、この本はその中でもトップクラスに面白い1冊でした。

This is a guidebook that I would highly, highly recommend.

そしてここでぜひ紹介したいのが著者のひとり、南雄介氏による「マグリットの現代性」という序文です。これがまた素晴らしかったのです。この本を開いて一番初めに読むことになるのがこの文章なのですが、これを読んだだけで私は「この本は間違いなく名著だ・・・!」という思いを抱きました。「この方が書いているなら信頼できる!」という思いが自然と浮かんできたのです。そして実際にこの本はその通りの名著でした。

少し長くなりますがその文章を全文引用したいと思います。マグリットの特徴や魅力がストレートに伝わってくる素晴らしい文章ですのでじっくりと読んでいきます。

マグリットの現代性

マグリットは、1967年に68歳で亡くなっているので、もうすぐ没後半世紀が経過することになる。時代の変化が早い現代において、50年昔というと、かなり遠い過去のように感じられるかもしれない。しかしながら、マグリットの芸術や作品の魅力が、過去のものとなったかといえば、けっしてそんなことはないだろう。

たとえば、マグリットの大規模な個展や回顧展は、2011年のヨーロッパ(ウィーンとリヴァプール)、2013-14年のアメリカ(ニューヨーク、シカゴ、ヒューストン)、2015年の日本(東京と京都)と立て続けに開かれているし、没後50年をめざして、パリでも準備が進んでいると聞く。現代に生きる人々にとっても、マグリットへの関心、マグリットの魅力は、逆に増すばかりのように思われる。それを証明する出来事が、マグリット美術館の開館である。

ヨーロッパ連合の首都ブリュッセルの中心部、王宮広場に面して、べルギー王立美術館のウイングのひとつとしてマグリット美術館が開館したのは、2009年6月2日のことだった。この美術館の展示は、作品だけがただ淡々と並んでいるというタイプのものではない。代表作の数々に加えて、写真、文献、書簡、映像などの資料をふんだんに展示し、あわせて壁面にはマグリットの言葉の数々をちりばめて、マグリットの芸術と生涯をたどっており、現代のミュゼオロジーの粋を尽くしたものと言えるだろう。これを見ると、作品の背後にいる人間マグリットの思考に関心をそそられるとともに、20世紀べルギーを代表する文化的ヒーローとしての芸術家マグリットの存在感が、強く印象付けられる。

だが、よく考えてみると、これは少し奇妙なことなのかもしれない。なぜなら、マグリットの生涯は、どちらかといえば平凡で起伏の少ないものであったのだから。人々が期待する「芸術家」といえば、創造性と活力にあふれて愛人を変えるたびにスタイルを変えるピカソであったり、自らの芸術に行き詰まりを感じて酒に溺れ、自動車事故で破滅的な生を終えたポロックであったり、セレブたちとの華麗な交友を演じてニューヨークの夢と退廃を体現したウォーホルであったり、―並外れた才能と引き換えに心の平安を失い、常人とは違った破天荒な生涯を送る存在ではなかっただろうか。

これに対してマグリットは、べルギーのフランス語地域の小さな町レシーヌに生まれ、成長してから後は、3年足らずのパリ生活を除いて、40年以上をブリュッセルに過ごしている。幼なじみの女性と23歳で結婚し、死ぬまで添い遂げた。つつましいアパルトマンの食堂の一隅を仕事場とし、比較的小さな絵画を、毎日規則的に描き続けた。ダークスーツと山高帽を愛用し、髪をオールバックに整えた外貌は、役人かビジネスマンのようにありふれた、プチブルジョワ的なものだった。―いわゆる「芸術家」の生涯としては、きわめつけに地味なものではないだろうか。

これは、その絵画のスタイルにも当てはまる。

マグリットは、目の前の現実を、誰にでも誤解のないように、わかりやすく表現することに努力を傾注した画家である。無表情な写実的様式で描かれた絵画は、何が描かれているかひと目でわかる。マグリットの絵の中では、バラはつねにバラ色をしているし、ライオンはつねに黄色っぽい黄土色をしているし、タ陽はつねに赤い色をしている。マグリットの絵には、ゴッホのように個性的な筆使いや色彩はないし、ピカソのような形のデフォルメもない。彼のスタイルは、可能な限り匿名的な、誰のものでもないスタイルである。そしてそのスタイルを、ごく一時期を除いて、数十年間ほぼかわらず守り続けた。

だが、誰のものでもあり得るような、平凡な生涯と生活を送り、誰のものともつかないような、特徴のないスタイルの作品を描いた画家の作品は、それではどうして、つねにひと目でマグリットとわかるような、個性を刻印されているのだろうか。もちろんそれは、マグリットがほかの人にはけっして思いつかないような斬新なアイデアを生み出し、それを明確なイメージとして定着させたからである。マグリットが生涯を通じて取り組んだのは、イメージの問題である。イメージは、人間の心や精神に、どのように働きかけるのか。言葉や観念とイメージは結びついているのか。そして、イメージは世界とどのように関係しているのか。マグリットが作り出したのは、たんに思いつきだけの奇抜なイメージではない。彼は、世界は神秘であると考えていた。一つひとつの作品は、世界から与えられる神秘の感覚を表現するものなのである。

おそらくマグリットの現代性は、このようなマグリットの芸術の本質と関わっている。IT革命以降の現代社会には、人類の歴史が始まって以来、最も大量のイメージがあふれているだろうし、いかなるイメージに対しても、誰もが容易にアクセスできるようになっている。それは逆に、膨大なイメージに覆われて、世界の輪郭や感触が希薄になっていることを意味する。世界に対する認識は、今まさに再編成されようとしているのかもしれない。マグリットは、淡々とした日常生活を送りながら、芸術や絵画といった枠組みを超えて、イメージと世界との関係をめぐる思索を凝らし、日々作品を描き続けた。この画家の芸術は、現代に生きる私たちの感覚を、ある意味で先取りしているのである。マグリットの芸術が、現代の人たちの目に今なお新鮮に映るとすれば、それは、私たちの隣人としての画家の眼差しを感じ取ることができるからではないだろうか。

東京美術、南雄介監修・著、福満葉子著『もっと知りたいマグリット 生涯と作品』P2-3

私はこの文章に痺れました。マグリットの魅力が凝縮されていますよね。

そしてまた注目したいのはこの文章が掲載されているページのレイアウトです。見開き2ページの上方にマグリットの絵、そして残りの4分の3ほどのスペースにこの文章がずらーっと埋められています。文章自体も素晴らしいですがこのページデザインからしてまた格好いいんです!これはなかなかないパターンのレイアウトです。ぜひこの本を手に取って見てみてください。このページからすでに私はノックアウトされました。この本ではそんな素晴らしい解説者によるガイドの下、マグリットの作品を堪能することができます。

また、この本を通してシュルレアリスム、フロイトとの関係も学ぶことができます。フロイトは後々当ブログでも取り上げようと考えていたのでこれは非常に興味深いものになりました。

このガイドブックも非常におすすめです。ぜひぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「『もっと知りたいマグリット 生涯と作品』概要と感想~不思議な絵画で有名なマグリットのおすすめガイドブック」でした。

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