三島由紀夫『音楽』あらすじと感想~フロイトの精神分析への批判的な挑戦が込められた名作!

「女性心理と性の深淵をドラマチックに描く異色作」

本紹介では「女性心理と性」という怪しげな作品のように感じてしまうかもしれませんが、実はこの作品は三島によるフロイト的な精神分析への挑戦が書き込まれた小説でもあります。私が本書を読んだのもまさにこのフロイトへの挑戦に関心があったからでした。

本作の主人公は精神科医です。この中年の精神科医の手記という形で物語が進んでいきます。

彼は自身の精神分析をふんだんにこの手記の中で披露していくのですが、いかんせん相手が悪かった!彼のもっともらしい解釈は美女の謎の行動や言葉に次々と覆されていくことになります。ここに三島のフロイトへの挑戦が込められています。