三島由紀夫『鏡子の家』あらすじと感想~三島の失敗作?彼の転換点となった長編を考える

本作『鏡子の家』は1959年に発表された長編小説です。三島由紀夫は1954年に『潮騒』で新潮社文学賞、56年に『金閣寺』で読売文学賞を受賞し、プライベートでも58年に瑤子夫人と結婚するなどまさに飛ぶ鳥を落とす勢いでした。

そんな三島が精魂込めて書き下ろした『鏡子の家』。この作品の大きな主題は「時代」であると三島自身が述べています。

三島はこの小説で鏡子の家に集まる4人の青年に時代を投影し三島流の「戦後は終わった」文学を表現しようとしました。これは三島にとっても初めての試みで野心的な挑戦でした。

しかし500日をかけ精魂込めて書き下ろした『鏡子の家』は批評家に酷評され、失敗作の烙印を押されてしまいます。三島はこのことに深い傷を負うことになりました。