(16)レーニンの死と今なお生き続ける神殿としてのレーニン廟

レーニン自身はまさか死後、自分の遺体が防腐処置をされ半永久的に保存され崇拝されることになるなど想像もしていなかったかもしれません。レーニンの家族も死後は墓に埋葬されることを望んでいました。

しかしソ連の指導力を高めるためには彼の遺体は非常に重要な意味を持っていました。そこに目を付けた人物達が家族の反対を押し切り、レーニンをまさしく不滅の神へと押し上げていくのです。

レーニンの遺体を保存し「永久に」祀ることはまさしく宗教的な響きがします。無神論を標榜するソ連においてこれは何とも逆説的な崇拝でした。

レーニンは死してなおもロシアに生き続けています。レーニン廟の存在は私たちが想像するよりはるかに深いところでロシアと繋がっています。これは宗教を学ぶ上で、いや、人間そのものを学ぶ上でも非常に重要な問題です。