(19)ベルニーニ『ダヴィデ』~ベルニーニの驚異の集中力とミケランジェロの『ダヴィデ』との比較

私もボルゲーゼ美術館でベルニーニの魔術に引き込まれた一人です。専門家の石鍋真澄が述べるように、ダヴィデの視線の先には明らかにゴリアテがいます。そして今にも石を投げんとしているのが伝わってきます。その瞬間を私達は目撃しているのです。ベルニーニの彫刻は私たちの現実世界を吹き飛ばしてファンタジー、物語空間に強制的に引き込んでしまいます。この物語性、メッセージ性がベルニーニの真骨頂。20代前半にして彼はその域に到達していたのでした。恐るべき早熟の天才と言えるでしょう。