梶川伸一『幻想の革命 十月革命からネップへ』~飢餓で始まり、幻想で突き進んだ革命の実像

1921年、ソ連は大飢饉に見舞われていました。ですが、この飢饉は天災ではなく、人災でした。前年にレーニンが農民から徹底的に食料を収奪し、翌年に植えるための種まで持って行ってしまったため農村では大混乱が起き、未曽有の飢饉に苦しむことになったのです。

このままではソ連が崩壊するということでソ連は新経済政策(ネップ)を打ち出すことになります。このネップと飢餓の関係が本書の主要テーマとなります。

ソ連の描く素晴らしい未来とネップが結び付けられがちですが、著者の梶川氏は当時の資料を基に、ネップがそもそも飢餓と結びついたものでありとても理想的な政策とは呼べるものではないということを述べていきます。

ソ連首脳部が描いた幻想が膨大な餓死者を招いたという恐るべき事実をこの本では知ることになります。