P・フォーキン「ドストエフスキーの「信仰告白」からみた『カラマーゾフの兄弟』」岩波書店『思想』2020年6月号より
著者のF・フォーキン氏は1965年、カリーニングラードに生まれ、カリーニングラード大学を卒業し現在はロシア国立文学博物館研究員であると同時にモスクワ・ドストエフスキー博物館の主任を務めています。
この論文の特徴はドストエフスキー最後の作品『カラマーゾフの兄弟』をドストエフスキーの信仰告白であると捉えている点にあります。
著者のF・フォーキン氏は1965年、カリーニングラードに生まれ、カリーニングラード大学を卒業し現在はロシア国立文学博物館研究員であると同時にモスクワ・ドストエフスキー博物館の主任を務めています。
この論文の特徴はドストエフスキー最後の作品『カラマーゾフの兄弟』をドストエフスキーの信仰告白であると捉えている点にあります。
著者のI・S・ベーリュスチン(1820年頃~1890)はロシア正教の司祭の家庭に生まれ、自身も司祭職に就きました。
この本はとにかく強烈です。ロシアの農村の教会がここまでひどい状況にあったのかと目を疑いたくなってきます。
そしてなぜそうなってしまったのかを著者は語っていきます。
この本を読むことでいかにオプチーナ修道院が重要な場所であるか、ドストエフスキーにとってキリスト教というのはどういうものなのかということがより見えてくるような気がしました。
この本の特徴はロシアの偉大なる修道士の生涯と思想をひとりひとり丁寧に紹介しているところにあります。
特に18世紀に名を馳せた聖ティーホンについて書かれた章は重要です。聖ティーホンの思想は後の修道僧や長老に大きな影響を与え、ドストエフスキーも彼の思想や生涯に感銘を受け、その印象は『カラマーゾフの兄弟』や『悪霊』の執筆に反映されています。
『オープチナ修道院』ではこの修道院の歴史や高名な長老達の思想や生涯を知ることが出来ます。写真や絵も豊富なので、この修道院がどのような場所なのかをイメージするには非常に便利な本となっています。
『カラマーゾフの兄弟』、特にゾシマ長老と主人公アリョーシャの関係性をより深く知りたいという方にはぜひともお勧めしたい1冊です。
この本では謎の国ロシアの精神史を建国の歴史と一緒に学ぶことができます。
ロシアとは一体何なのか、これまでとは違った切り口で見るとてもよい機会となります。
ロシア宗教史を学びたい方にはうってつけの入門書です。
キリスト教といえば人間は罪深い人間であるという原罪や、原罪から救われるために神に祈るというイメージがあります。
ですが著者の高橋保行は、それは伝統的なキリスト教の思想ではなく、西洋的な発想の下、後から付け足された思想であって、ローマカトリック教会の思想はヨーロッパ独特の産物であると述べます。
『カラマーゾフの兄弟』をさらに深く読み込みたいという時にはこの著作は特におすすめです。ドストエフスキーが人間の救いをどこに見出していたのかを探る大きな手掛かりになることでしょう。
この本の特徴はロシア正教とドストエフスキーについて詳しい解説がなされている点にあります。
この本を読んで私はとても驚きました。キリスト教といえば無意識にローマカトリックやプロテスタントのことを考えていましたが、ロシア正教はそれらとはかなり異なった教えや文化を持っているということをこの本によって知りました。
そもそもロシア正教とは何なのか。
カトリックやプロテスタントと何が違うのか。
それらがこの著書に詳しく書かれています。
ドストエフスキーに関してもかなりの分量を割いて解説されています。
この記事ではこれまで紹介してきましたドストエフスキー論を一覧できるようにまとめてみました。
それぞれの著作にはそれぞれの個性があります。
また、読み手の興味関心の方向によってもどの本がおすすめかは変わってくることでしょう。
簡単にですがそれぞれのドストエフスキー論の特徴をまとめましたので、少しでも皆様のお役に立てれば嬉しく思います。
ドストエフスキーに関する参考書はそれこそ無数に存在しますが、その多くはやはり『罪と罰』や『悪霊』『カラマーゾフの兄弟』などドストエフスキー後期の長編を題材にしていることがほとんどです。
そんな中、この本ではドストエフスキーの若かりし頃の作品を主に論じています。
しかも単にドストエフスキー作品の解説をするのではなく、当時の混沌としたロシア情勢やドストエフスキーがどのようにして作家としての道を歩んでいったのかが詳しく書かれています。
この著作では国内外の研究をふまえて、作品を論じていきます。これまでドストエフスキーがどのように研究され現在はどのように論じられているかという流れがわかりやすく説かれています。
特に以前紹介したバフチンや、夏目漱石、小林秀雄など日本の文人とドストエフスキーの繋がりの歴史も知ることででき、新しい発見をすることができました。
また著書の後半にドストエフスキーに関するエッセイが多数収録されていますが、その中でもドストエフスキーゆかりの地を巡るシリーズは特に興味深かったです。