ソ連

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

モンテフィオーリ『スターリン 青春と革命の時代』~スターリンの怪物ぶりがよくわかる驚異の伝記!

前作の『スターリン 赤い皇帝と廷臣たち』も刺激的でかなり面白い書物でしたが、続編のこちらはさらに面白いです。独裁者スターリンのルーツを見ていくのは非常に興味深いものでした。

彼の生まれや、育った環境は現代日本に暮らす私たちには想像を絶するものでした。暴力やテロ、密告、秘密警察が跋扈する混沌とした世界で、自分の力を頼りに生き抜かねばならない。海千山千の強者たちが互いに覇を競い合っている世界で若きスターリンは生きていたのです。

この本を読めばスターリンの化け物ぶりがよくわかります。運だけで独裁者になったのではありません。彼は驚くべき経験を経てカリスマへと成長していったのです。その過程を学ぶことは世界の歴史や戦争とは何かを学ぶ上で非常に重要な示唆を与えてくれるものであると思います。

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

(5)独ソ戦中のスターリンとナチスドイツに反撃するソ連軍の地獄絵図のごとき復讐戦

独ソ戦が始まり、強力なドイツ軍に対抗するためにスターリンはある政令を制定します。それが上記のNKGB命令第二四六号と政令第二七〇号でした。

これによりソ連兵は政府に自分の家族を人質に取られたと同等になります。家族を殺されたくなければ戦え。逃げたらお前も家族も皆処刑する。死ぬまで戦わず敵の捕虜となった時も家族を逮捕する。だから死ぬ気で戦え。

こうしてソ連は兵士を戦地に送り続けていたのでした。

そしてソ連の反撃が始まります。これがまさに戦争の恐怖を体現した地獄のような有様となったのでした・・・

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

(4)スターリンとイワン雷帝のつながり~流血の上に成立する社会システムとは

スターリンは自らを16世紀のロシア皇帝イワン雷帝になぞらえていました。

イワン雷帝はロシアの歴史を知る上で非常に重要な人物です。

圧倒的カリスマ、そして暴君だったイワン雷帝。彼も恐怖政治を敷き、数え切れないほどの人間を虐殺し拷問にかけました。

しかしその圧倒的な力によってロシア王朝を強大な国家にしたのも事実。こうした歴史をスターリンも意識していたのでしょう。

スターリンとイワン雷帝の比較は非常に興味深い問題です。

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

(3)愛妻の自殺を嘆き悲しむスターリン~スターリンの意外な一面とは

スターリンは仕事人間で家庭をまず顧みませんでした。しかしナージャとスターリンは度々喧嘩しながらも心を開いて会話ができる関係でした。スターリンにとって心許せる唯一のパートナーだったのです。

しかしソ連中枢部の異様な状況、つまり政治的策謀やスターリンの奔放な態度にナージャは精神を病んでいきました。そしてとうとう、彼女は自分の心臓を銃で打ち抜き自殺してしまったのです。

さすがのスターリンも妻の自殺にショックを受けたそうです。何百万人もの人を平気で殺した独裁者も妻の死には涙を流し、激しいショックを受けました。

何百万もの人たちの死に対してほんの少しでもそうした死を悼む気持ちがあったとしたら歴史は変わっていたかもしれません。いや、きっとそうならない人だからこそ独裁者になりえたということなのかもしれませんが・・・

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

(2)1932年ウクライナの悲惨な飢饉をもたらしたレーニンボリシェビズムと宗教の関係とは

ソ連社会では宗教はタブーとされていましたがそのソ連の仕組みそのものが宗教的なものの上に成り立っているという何というパラドックス。宗教とは何かということをテーマにこれまでも色々と考えてきましたがこれは非常に示唆に富む場面でした。

そしてスターリン政権下では少なくとも400万から500万にも人が餓死をしたというのです。それも人為的なものによって・・・

スターリン時代にこういうことが起きていたのです。しかもスターリン政権下ではそれすらも「素晴らしい新世界」を作るために正当化されたのでした・・・もはや想像を絶する規模の話と化してきました・・・

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

(1)スターリンとは何者なのか~今私たちがスターリンを学ぶ意義とは 

スターリン自身が「私だってスターリンじゃない」と述べた。

これは非常に重要な言葉だと思います。

スターリンはソ連の独裁者だとされてきました。しかしそのスターリン自身もソヴィエトというシステムを動かす一つの歯車に過ぎなかったのではないか。スターリンが全てを動かしているようで実はそのスターリン自身もシステムに動かされていたのではないかという視点は非常に興味深いものでした。

独裁者とは何かを考える上でこの箇所は非常に重要であると思います。

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

モンテフィオーリ『スターリン 赤い皇帝と廷臣たち』~ソ連の独裁者スターリンとは何者だったかを知るのにおすすめの参考書!

この作品の特徴は何と言っても人間スターリンの実像にこれでもかと迫ろうとする姿勢にあります。スターリンだけでなく彼の家族、周囲の廷臣に至るまで細かく描写されます。

スターリンとは何者だったのか、彼は何を考え、何をしようとしていたのか。そして彼がどのような方法で独裁者へと上り詰めたのかということが語られます。

この本は上下巻合わせて1200ページほどの大作です。ですが読んでいて全く飽きません。小説のような語り口によってどんどん引き込まれます。

読むにもなかなか骨が折れる大作ですがこれは読む価値ありです。面白いです!

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

横手慎二『スターリン 「非道の独裁者」の実像』~スターリン入門におすすめの一冊

この本は単純にスターリンを大悪人として断罪するのではなく、なぜロシア人は今でもなお彼を評価するのだろうかという観点を軸にスターリンとは何者かを解説していきます。

スターリン入門として読みやすく、偏りのない記述ですのでこの本はおすすめです。

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

H・カレール=ダンコース『レーニンとは何だったか』~レーニンをもっと知るならこの1冊

この本の特徴は書名にもありますように「レーニンとは何だったか」という大きな問題提起にあります。レーニンはなぜレーニンたりえたのか、その要因はどこにあったのかということを探究していきます。

この本はタイトルの通り、「これまで偶像化され崇拝されてはいたが、実際にはレーニンとは何者だったのか」というスタンスで進んで行きます。これまでのソ連時代のイメージとはまったく違ったレーニンの姿を私たちは知っていくことになります。

ロシアの文豪ツルゲーネフ

レーニンはなぜツルゲーネフを好んだのか~レーニン伝から見るツルゲーネフ

レーニンが文学をどのように見ていたのかというのは非常に興味深い問題です。指導者の好みはその国の文化にも影響を与えます。彼の方針で「何が善であるか」が規定され、それに基づいて新たな文学が生み出されたり、過去の文化を解釈していくことになるからです。

ドストエフスキーと同時代人の大文学者たちがソ連時代にどう受け止められていたのかということを知ることで、ソ連時代に書かれたドストエフスキー像がどのような背景で作られていったかを垣間見ることができます。これはドストエフスキーを知る上でとても気になる部分です。