地獄変・偸盗

芥川龍之介『地獄変』あらすじと感想~地獄絵の完成には地獄を見ねばならぬ…天才画家の狂気を描いた傑作!

この作品を読んでいると、まるでサスペンス映画を観ているかのような緊張感に自分が包まれていることを感じます。天才画家良秀が弟子を鎖で縛ったりミミズクをけしかけるくらいまではまだいいのです。「また始まったよ良秀の奇行が」くらいのものです。ですがそこから段々妙な予感が私達の中に生まれ、次第に不気味に思えてきます。「まさか、良秀がやろうとしていることって・・・」とついハラハラしてしまいます。この徐々に徐々に恐怖や不安を煽っていくスタイルは、ミステリーのお手本とも言うべき実に鮮やかなストーリーテリングです。さすが芥川龍之介です。

この作品には「完璧な絵を描き上げんとする狂気の画家を、言葉の芸術家が完全に描き切るのだ」という芥川の野心すら感じさせられます。

この作品が芥川文学の中でも傑作として評価されている理由がよくわかります。

羅生門・鼻

芥川龍之介『羅生門・鼻』あらすじと感想~大人になった今だからこそ読みたい!悪へと進むその決定的瞬間を捉えた名作!

ま~それにしても芥川の短編技術の見事なこと!羅生門を上り、夜の闇に現れる不気味な気配。そこに何がいるのかと大人になっても変わらず夢中になって読んでしまいます。まるで映画的な手法と言いますか、臨場感がとてつもないです。

この作品である一人の男が悪の道へと踏み出すその瞬間を決定的に捉えた芥川。その微妙な心理状態を絶妙にえぐり出したラストは絶品です。

『羅生門』は厳しい。厳しい厳しい世の有り様をこれでもかと見せつけます。悪の道へ踏み出すというのはどういうことなのか、まさにそこへと通じていきます。実に素晴らしい作品です。

また、この記事では芥川龍之介とロシア文学、特にゴーゴリとのつながりについてもお話ししていきます。

スリランカ巨大仏の不思議

楠本香代子『スリランカ巨大仏の不思議』~彫刻家から見たスリランカ仏像の魅力とは!新たな視点で学べるおすすめガイド!

本書の著者は仏教の専門家ではなく彫刻家です。

彫刻を彫る側の人がスリランカの仏教美術を見たらどのようなことを思うのかというのは私にとってもものすごく刺激的でした。

スリランカの有名な仏像やマニアックな仏像まで数多くの素晴らしい美術を本書では紹介しています。写真や地図なども豊富に掲載されていますのでスリランカを訪れる際のガイドブックとしても優秀です。

これは面白い本でした。新たな視点でスリランカ仏像を見れる刺激的な一冊です。

美女と野獣

ディズニーの原作『美女と野獣』あらすじと感想~ディズニー版との違いはどこに?その違いから見るディズニー版の魅力とは

原作を読んでみることでディズニー版の『美女と野獣』の素晴らしさがもっともっと見えてくることになりました。

私たちはすでに出来上がった完成品の『美女と野獣』を観てきたわけですが、この作品が出来上がるまでには並々ならぬ苦労があったことでしょう。そのことに思いを馳せながら観る『美女と野獣』はきっとこれまでとは違った味わいが感じられるのではないでしょうか。私もいよいよこの作品が自分にとって大きな存在となっていることを感じています。

実に興味深い読書となりました。

ピーターパン

J・M・バリ『ピーターパン』あらすじと感想~ディズニーの原作は想像以上に切なくて、バイオレンスな作品だった

私がこの『ピーター・パン』の原作を読もうと思ったのは何と言ってもディズニー映画の影響です。ウォルト・ディズニーは童話からアニメ映画を多数制作しています。そしてその映画化にあたり、ディズニーは大幅なアレンジを加えています。原作と映画の違いがわかればディズニーのオリジナル部分が見えてきます。

そして原作を読んでみるとそこで語られる彼の性格や物語に私は驚くことになりました。

まず、ピーター・パンの性格がとにかくどうしようもない!ディズニー映画でも彼は自由人過ぎますし抜けてる部分もありましたがまだ愛嬌があります。ですが原作のピーター・パンはもはや恐ろしさすら感じます。

ピノッキオの冒険

『ピノキオ』の原作は残酷?ジミニーを殺すピノキオ…ディズニー映画の見事な改変について考えてみた

『白雪姫』でもそうでしたがやはり原作はバイオレンスで残酷です。

なんと、『ピノキオ』の原作ではあのジミニー・クリケットがピノキオに木槌で叩き殺されるという衝撃の展開が繰り広げられます。

その他にもディズニー映画とはまるで違うピノキオの世界が原作では描かれています。

ディズニーがいかにこのバイオレンスな世界を家族で安心して見られる映画に改変したのかは非常に興味深いです。

グリム童話 白雪姫

グリム童話『白雪姫』あらすじと感想~ディズニーの原作!原作との違いからわかるディズニーの驚くべき改変とは

あのお妃は三度も白雪姫を殺そうとした?

死体愛の王子様?

今回ご紹介するグリム童話の『白雪姫』は私たちが想像する『白雪姫』に比べると明らかに暗く、ブラックな展開となっています。

このブラックな展開を知ることでディズニー映画がいかに物語を改変したかがよくわかります。

そしてこの改変にこそディズニーの特徴を知る鍵があります。この記事ではそのことについて考えていきます。

ドストエフスキーの旅

上田隆弘『ドストエフスキー、妻と歩んだ運命の旅~狂気と愛の西欧旅行』記事一覧~目次としてご利用ください

この記事では私のヨーロッパ旅行記『ドストエフスキー、妻と歩んだ運命の旅~狂気と愛の西欧旅行』の記事30本をまとめています。

私はドストエフスキーが好きです。ですが、何よりも「アンナ夫人といるドストエフスキー」が好きです。 そんな二人の旅路が少しでも多くの人の目に触れるきっかけとなったらこんなに嬉しいことはありません。

ディズニー伝説

ボブ・トーマス『ディズニー伝説』~天才ウォルトを支えた実務家の兄ロイに注目した伝記!天才は支える人あってこそ!

本書の特徴は何と言ってもミッキーマウスの生みの親ウォルト・ディズニーの兄ロイ・ディズニーに焦点を当てている点にあります。

いくらウォルトの天才的な創造力があったとしても、それを実現する資金と環境を用意できなければ破滅しかありません。ウォルトの伝記でもそれは強調されていました。天才ウォルトは実務的なことが全く見えていません。彼が見ているのはその作品の究極のクオリティーだけなのです。無謀としか言いようのない計画をウォルトはいつもぶち上げます。普通なら絶対に無理なはずのその企画を実際に完成に導いた陰の功労者こそロイ・ディズニーというもう一人の天才なのでした。

天才も天才だけでは世に出てはいけない。支えてくれる実務家の存在も重要なのだということを感じさせられる一冊です。

ウォルト・ディズニー 創造と冒険の生涯

ボブ・トマス『ウォルト・ディズニー 創造と冒険の生涯』~ディズニー社公認伝記!バイブルとしてのウォルター伝

本書はディズニー社公認のウォルト・ディズニー伝です。

1928年に『蒸気船ウィリー』でデビューしたミッキーマウス。本書はその生みの親ウォルト・ディズニーの規格外の生涯を知れるおすすめ伝記です。

ボブ・トマスの伝記は割とすっきり書かれ、さらにウォルトのよい面や功績がわかりやすく説かれるので入門書として読みやすい作品です。

ディズニーファンにぜひおすすめしたい一冊です。よりディズニーのことが好きになること間違いなしです。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。