ドストエフスキー『永遠の夫』あらすじと感想~美人妻と寝取られ亭主、不倫男の奇妙な三角関係

『永遠の夫』は何をしでかすかわからない深層心理の混沌を描くという、ドストエフスキー得意の心理描写が冴えわたった作品です。ドストエフスキー入門としては少々厳しいものがありますが、ドストエフスキーにはまり出した方にはぜひおすすめしたい作品です。

小説の分量も中編小説ということでドストエフスキーにしてはお手軽なページ数になっています。

白痴

ドストエフスキー『白痴』あらすじと感想~キリストの創造~ドン・キホーテやレミゼとの深い関係

「無条件に美しい人間」キリストを描くことを目指したこの作品ですが、キリスト教の知識がなくとも十分すぎるほど楽しむことができます。(もちろん、知っていた方がより深く味わうことができますが)

それほど小説として、芸術として優れた作品となっています。

『罪と罰』の影に隠れてあまり表には出てこない作品ですが、ドストエフスキーの代表作として非常に高い評価を受けている作品です。これは面白いです。私も強くおすすめします。

賭博者

ドストエフスキー『賭博者』あらすじと感想~ギャンブル中毒の心理を実体験からリアルに描写 

この作品はドイツの保養地を舞台に、家庭教師の青年と将軍家の令嬢との病的な恋やギャンブルにのめり込む人間の心理をリアルに描いた物語です。

なぜ人間はギャンブルにはまってしまうのか、そしてギャンブルにはまった人間の心理は一体どのようなものなのか。

重度のギャンブル中毒だったドストエフスキー。

そんな彼が実際に体験した出来事が反映されたこの作品はかなりえげつないものになっています。

罪と罰

ドストエフスキーの代表作『罪と罰』あらすじと感想~ドストエフスキーの黒魔術を体感するならこの作品

ドストエフスキーがこの小説を書き上げた時「まるで熱病のようなものに焼かれながら」精神的にも肉体的にも極限状態で朝から晩まで部屋に閉じこもって執筆していたそうです。

もはや狂気の領域。

そんな怪物ドストエフスキーが一気に書き上げたこの作品は黒魔術的な魔力を持っています。

百聞は一見に如かずです。騙されたと思ってまずは読んでみてください。それだけの価値があります。黒魔術の意味もきっとわかると思います。これはなかなかない読書体験になると思います。

冬に記す夏の印象

ドストエフスキー『鰐』あらすじと感想~拝金主義や社会主義思想を風刺したユーモラスな短編小説

鰐に丸呑みされたイワン・マトヴェーヴィチをめぐるドタバタ劇。

どこか風刺的で、パロディかコントのような雰囲気の作品です。

「あのドストエフスキーがこういう作品を書くのか」と初めて読んだ時は驚いたことを覚えています。

この作品は思わずくすっとしてしまうような、絶妙にスパイスの効いたユーモアがいたるところに散りばめられています。

重くて暗くて難しい。そんなイメージが強いドストエフスキーですが、こういうユーモアのある作品もあるのだということを感じられる作品です。

『地下室の手記』あらすじと感想~ドストエフスキーらしさ全開の作品~超絶ひねくれ人間の魂の叫び

この作品は「ドストエフスキー全作品を解く鍵」と言われるほどドストエフスキーの根っこに迫る作品です。

ドストエフスキーらしさを実感するにはうってつけの作品です。

有名な大作が多いドストエフスキーではありますが、『地下室の手記』は分量的にも読みやすいのでとてもおすすめです。ぜひ読んで頂きたい作品です。

この作品は時代を経た今でも、現代社会の閉塞感を打ち破る画期的な作品だと私は感じています。

冬に記す夏の印象

ドストエフスキー『冬に記す夏の印象』あらすじと感想~西欧社会を厳しく批判!異色のヨーロッパ旅行記

この『冬に記す夏の印象』はドストエフスキーのヨーロッパ観を知る上で非常に重要な作品です。

また「奇妙な旅行者」ドストエフスキーの姿を見ることができる点もこの作品のいいところです。小説作品とはまた違ったドストエフスキーを楽しむことができます。

文庫化された作品ではありませんが、『冬に記す夏の印象』はもっと世の中に出てもいい作品なのではないかと強く感じます。

日本人には特に共感できる内容なのではないかと思います。

いまわしい話

ドストエフスキー『いまわしい話』あらすじと感想~その優しさは他人には迷惑きわまりないものなのかもしれない。

様々な参考書や解説を読んでいると、『地下室の手記』以前のドストエフスキーは人道主義(ヒューマニズム)の作家であると解説されますが、初めてドストエフスキー全集を読み始めた時にはその意味がなかなかわかりませんでした。

しかし全集を読み進めてきてこの作品とぶつかった時に、「おお!なるほど!」とすっかりそのもやもやが晴れることになりました。

ドストエフスキーの人道主義を知る上で非常に参考になる作品です。

虐げられた人びと

ドストエフスキー『虐げられた人びと』あらすじと感想~いびつな三角関係はどこへ向かう?

私個人の感想ですがこの作品は一言で言えば、「歯がゆい!」に尽きます。

典型的な「いい人」、主人公のワーニャが幼馴染で才色兼備のナターシャに恋をしています。しかしナターシャはあろうことか典型的なダメ男に恋をし、家族まで捨てて破滅にまっしぐら。

ワーニャはそんなナターシャを見捨てられず、あれやこれやと世話をしたり、恋敵との取り持ちまでさせられる始末。

「いい人」の悲哀がこれでもかと描かれています。