佐藤清郎『わが心のチェーホフ』~チェーホフの魅力や面白さをわかりやすく解説した名著!

この本ではチェーホフがいかに優れた作家か、そしてその特徴がどこにあるのかということがこの上なくわかりやすく書かれています。

そしてチェーホフだけではなく、ドストエフスキーとの対比も書かれているので、チェーホフを知りたい方だけではなく、ロシア文学や演劇を知りたい方にとっても非常に面白い知見がたくさん説かれています。

この本を読めばチェーホフだけでなくロシア文学の特徴、そしてそれらが現代日本を生きる私たちにどのような意味があるのか、どのような問いかけをしているかまで学ぶことができます。

この本はとにかくおすすめです。チェーホフ関連の本で何を読もうか迷っている方がいればまずこの本をお薦めしたいです。

佐藤清郎『チェーホフ劇の世界』~チェーホフ劇のおすすめ参考書!

この本の特徴ですが、タイトルにありますようにチェーホフの劇に特化して解説された参考書です。同氏の『チェーホフ芸術の世界』では小説作品のみを取り上げていたのに対し、こちらの本では小説作品は取り上げません。

チェーホフ四大劇の『かもめ』、『ワーニャ伯父さん』、『三人姉妹』、『桜の園』だけでなく、『イヴァーノフ』という作品についてもかなり詳しく解説されています。

演劇とは何か、小説とは何が違うのかということまでじっくり考察された盛りだくさんな本です。四大劇だけでなく、舞台演劇に興味のある方にもおすすめしたい内容となっています。

桜の園・三人姉妹

チェーホフ『桜の園』あらすじと感想~チェーホフ最晩年の名作劇!

個人的な感想ですが『桜の園』は四大劇の中では一番読みやすく、印象に残った作品でした。

時代に取り残されていくのんきな田舎貴族と、現実的な商人ロパーヒンの対比はチェーホフの力量がまさに遺憾なく発揮されています。

本を読んでいても独特な間と余韻が感じられます。もしこれを劇で観れたとしたらどれほどのインパクトを受けるだろうかと思ってしまいました。

桜の園・三人姉妹

チェーホフ『三人姉妹』あらすじと感想~悲劇と喜劇の融合!晩年の熟練した技術が詰め込まれた傑作劇!

『かもめ』で圧倒的な成功を収めたチェーホフ。その新しい演劇方式は演劇界に革命をもたらしました。チェーホフは独自な劇をするということが世に広まった後ですら、この台本を見た舞台関係者は困惑してしまうほどでした。

この作品はチェーホフの劇へのこだわりが強く出ている作品となっています。

チェーホフ『ワーニャ伯父さん』あらすじと感想~ゴーリキーが号泣した劇作品

この劇は『かもめ』というロシア演劇界に革命を起こした作品を経てさらに円熟した作劇が光る作品となっています。

この作品の大きなテーマは「絶望から忍耐へ」です。

この作品を見たゴーリキーは感動して号泣してしまったと言われています。

この記事ではそんな『ワーニャ伯父さん』についてお話ししていきます。

チェーホフ『かもめ』あらすじと感想~ロシア演劇界に革命を起こしたチェーホフの代表作!

『かもめ』はチェーホフの代表作として今では有名ですが、実はこの劇の初演はとてつもない大失敗だったと言われています。

『かもめ』は当時の劇としては斬新すぎてお客さんどころか演じる役者ですら全く理解できなかったそうです。

しかしその2年後ダンチェンコによってモスクワ座で『かもめ』が再演されます。チェーホフの意図するところを深く理解した彼によって指揮された『かもめ』はロシア演劇界最大級の事件になるほどの大成功を収めます。

この成功があったからこそ後の『ワーニャ伯父さん』『三人姉妹』『桜の園』という名作劇が作られていくことになったのでした。

チェーホフ『僧正』あらすじと感想~幼い頃の幸福な思い出~僧正と母の再会・死別を描いた感動作

この物語は20ページほどの短い物語ではありますが思わずじーんとくるものがあります。母が最期に息子に呼びかけるシーンは何度読んでも泣きそうになります。

この作品が書かれたのはチェーホフの晩年です。

チェーホフ自身も結核でこれ以上あまり長く生きられないことを覚悟していたと思います。そういう時期にこの作品が書かれたというのもチェーホフを知る上で非常に意味があることなのではないかと私は感じました。

この作品もおすすめです。チェーホフ作品の中でも随一の感動作です。

チェーホフ『犬を連れた奥さん』あらすじと感想~不倫は悪か…チェーホフが見つめた男女の愛と苦悩とは

この物語は不倫の物語です。

チェーホフはこうした不倫の物語を多く描いています。 実はこれ、フランス人作家エミール・ゾラにもそうした傾向がありました。

ゾラにしろチェーホフにしろ、なぜ不倫ものを書いたのでしょう。私はそこに彼ら流の問題提起があるように思えます。

不倫ものをチェーホフは多く書きましたが、単にゴシップ的なものを書きたかっただけというのではなく、そこにある人間の苦悩をチェーホフは見つめていたのではないでしょうか。

チェーホフ『谷間』あらすじと感想~チェーホフの人間愛が感じられる名作

チェーホフの『谷間』の老人はドストエフスキーの『百姓マレイ』を彷彿とさせるものがあります。農村に生きる素朴な老人。彼らの優しさが人間性への信頼を取り戻させてくれたのです。

この作品はたしかに暗い雰囲気があるものの、救いがあります。チェーホフの人間愛や優しさが感じられる作品です。

ゴーリキーやトルストイなど錚々たる人達にも絶賛された作品です。ページ数も50頁ほどと読みやすい分量になっています。ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

チェーホフ『可愛い女』あらすじと感想~トルストイ大のお気に入りの作品

『可愛い女』を大絶賛し他人の前で何度も朗読までしたトルストイ。彼がいかにこの作品を気に入っていたかがうかがわれます。

こうしたところにもトルストイの考える理想像の特徴が見えてきます。

ですがこれに関して一つ裏話があります。

と言うのもチェーホフはトルストイのような意図で『可愛い女』を書いたわけではなかったのです。

チェーホフはまったく自分の意思のないオーレニカを風刺する意図で『可愛い女』というタイトルにしこの作品を書き上げたのでした。

ある作品をどのように読むか。そこに読み手の個性が表れるという好例がこの『可愛い女』とトルストイの組み合わせなのではないかと私は感じました。