ユゴーを批判したゾラが世紀の傑作『レ・ミゼラブル』をどう見るだろうか考えてみた

ユゴーの詩人としての天賦の才は人々を陶酔させる。しかしユゴーはあまりに理想を語りすぎ、現実と乖離していると批判したゾラ。

今回の記事ではそんなユゴーの偉大なる作品『レ・ミゼラブル』ならばゾラはどんなことを言うのだろうかということを考えていきたいと思います。

ちなみに、私はゾラもユゴーも大好きです。大好きだからこそ正反対の二人についてここでじっくり考えてみようとこの記事を書いたのでした。

ゾラのユゴー批判~ユゴーの理想主義を断固否定するゾラの文学論とは

まずはじめに言わせて頂きますが、私はユゴーが大好きです。そして同時に、ゾラも大好きです。

しかし、前回の記事でもお話ししましたように、この二人は真逆の文学観を持っています。

ユゴーの『レ・ミゼラブル』を読んでいると、「あぁ、ここはゾラだったら何と言うのかな」とふと思ってしまう時もあります。ユゴーの作品はとにかくドラマチックで面白いです。しかしその面白さ故に、ゾラがツッコミを入れてきそうな気がするのです。これはどういうことなのか。それはこれから読んでいくゾラの言葉を聴けばきっと納得して頂けると思います。

ユゴーとゾラはどちらもフランスを代表する作家です。この二人の特徴を知る上でもとてもわかりやすい評論がありますので、少し長くなりますがじっくりゾラの言葉を聴いていきましょう。

『〈ゾラ・セレクション〉第8巻 文学論集1865-1896』ゾラの文学観を知るならこの1冊!

この本は1865年から1896年にゾラによって書かれた文学論の中から編訳者が重要な13の論文を選び翻訳したものになります。

ゾラ(1840-1902)はフランスの偉大な作家でありますが、彼は同時にジャーナリストとして活躍していました。

特に作家としての駆け出しの頃はジャーナリストが本業と言ってもいいほどで、日々新聞にたくさんの記事を書いていました。

この本ではそんなゾラが文学について書いた論文を読むことができます。

そしてゾラの文学スタイル「自然主義文学」とは何かということがわかりやすく解説されているのがこの本の大きな特徴になります。

ユゴーの劇作品『リュイ・ブラース』あらすじと感想~スペインを舞台にしたユゴーらしさ溢れる演劇

ユゴーは詩人であり、劇作家でもありました。

ユゴーの最も有名な小説『レ・ミゼラブル』はそうした詩人、劇作家としての技能もふんだんに取り入れられた作品です。ユゴーは舞台化されやすいような演出を作品の中にすでに盛り込んでいたのです。どうすれば演劇的に盛り上がるか、そしてそれをどう小説に盛り込めば効果的か、そうした側面からもユゴーは作品制作をしていたのです。

そうしたことを知る上でもユゴーの劇作品に触れるのは非常に興味深い体験となりました。

後の記事でお話ししていきますがこの作品を題材にゾラがものすごい主張を展開していきます。これはユゴーファンにとってもゾラファンにとっても必見なものとなっています。私もその論を読みかなり衝撃を受けました。

鹿島茂『怪帝ナポレオンⅢ世 第二帝政全史』~ナポレオン三世の知られざる治世と実態に迫る一冊!

ナポレオン三世のフランス第二帝政という日本ではあまりメジャーではない時代ですが、この時代がどれだけ革新的で重要な社会変革が起きていたかをこの本では知ることになります。人々の欲望を刺激する消費資本主義が発展したのもまさしくこの時代のパリからです。その過程を見ていくのもものすごく興味深いです。

非常におすすめな一冊です。ぜひ手に取って頂けたらなと思います。

鹿島茂『明日は舞踏会』~夢の社交界の実態やいかに!?パリの女性たちの恋愛と結婚模様を解説!

女性にとって、舞踏会は戦場です。ここでの立ち振る舞いがその後の生活に決定的な影響を与えかねません。

華やかな衣装に身を包み、優雅な社交界でダンディー達と夢のようなひと時を…という憧れがこの本を読むともしかしたら壊れてしまうかもしません。

社交界は想像以上にシビアで現実的な戦いの場だったようです。

当時の結婚観や男女の恋愛事情を知るには打ってつけの1冊です。

フランス文学がなぜどろどろの不倫や恋愛ものだらけなのかが見えてきます。

鹿島茂『馬車が買いたい!』~青年たちのフレンチ・ドリームと19世紀パリの生活を知るならこの1冊!

この本ではフランスにおける移動手段の説明から始まり、パリへの入場の手続き、宿探し、毎日の食事をどうするかを物語風に解説していきます。

そしてそこからダンディーになるためにどう青年たちが動いていくのか、またタイトルのようになぜ「馬車が買いたい!」と彼らが心の底から思うようになるのかという話に繋がっていきます。

ものすごく刺激的な作品です!おすすめ!

なぜフランス人男性はモテるのか~パリの伊達男「ダンディー」の存在から考えてみた

フランス人男性といえばなんかもうそれだけでモテそうなイメージがありますよね。(勝手な偏見ですが笑)

でも、なぜ彼らはあんなに口が達者で恋愛上手なのか。

それもやはり、そうなっていくような時代背景があったからこそなのです。この記事ではそうした歴史的背景を見ていきたいと思います。
この記事を読めばパリのダンディーがいかに凄まじい存在かが伝わるかと思います。

パリのお針子グリゼットと学生の関係とは~19世紀フランスの若者達の出世コースと恋愛

グリゼットとは日本語訳するならば「お針子さん」と訳されます。

これまで当ブログでもお話ししてきた『レ・ミゼラブル』のファンテーヌはまさにこのグリゼットです。

フランス文学は当時の社会を映し出しています。そしてそれは現代日本を生きる私たちの鏡ともなることでしょう。

この記事ではそんなグリゼットと当時の時代背景について見ていきます

鹿島茂『職業別 パリ風俗』19世紀パリの人々の生活と職業、時代背景を知るならこの一冊!

この本では19世紀中頃のパリの人々の生活を職業という面から見ていきます。

小説が書かれた当時に当たり前だったことはわざわざ書かれたりはしません。

ですがその当たり前は「現代人たる私達の当たり前」とはまるで異なります。仮に小説中に弁護士という職業の人間が出てきたとしても、私達の想像する弁護士とはだいぶ違った仕事や生活ぶりをしていたのです。学生や医者、教師、グリゼット、警察、ジャーナリストなどなど、この本では様々な職業の「当たり前」を知ることができます。

この本を読めばフランス文学がものすごくわかりやすくなります。