親鸞とドストエフスキー・世界文学

ニーチェとドストエフスキー

ニーチェのデビュー作『悲劇の誕生』概要と感想~哲学者ニーチェの特徴を知るのにおすすめ

ニーチェは元々古典文献学者でした。ニーチェは古代ギリシア文献を当時の学問的常識とは全く異なる視点で見ていこうとしました。その試みの結晶がこの『悲劇の誕生』という作品になります。

「アポロ的とディオニュソス的」という有名な概念はそうした試みから生まれた概念になります。

文献学者という枠には収まりきらない、哲学者ニーチェの歩みがここから本格的に始まっていくのでした。

そうしたニーチェ哲学の始まりを知る上でもこの作品は非常に重要なものとなっています。

しかも私の個人的な感想ですが、『ツァラトゥストラ』をはじめ後半の作品群と比べても文章がわかりやすいような気がします。ニーチェ作品の中では読みやすい部類に入ると私は思います。

フリードリヒ・ニーチェニーチェとドストエフスキー

ニーチェ発狂の現場と『罪と罰』ラスコーリニコフの夢との驚くべき酷似

1889年1月、ニーチェ45歳の年、彼は発狂します。彼が発狂したというエピソードは有名ですがその詳細に関しては私もほとんど知りませんでした。
しかし、参考書を読み私は衝撃を受けました。その発狂の瞬間がドストエフスキーの代表作『罪と罰』の主人公ラスコーリニコフが見た夢とそっくりだったのです。

ニーチェとドストエフスキー

ニーチェは発狂したから有名になったのか~妹による改竄とニーチェの偶像化

ニーチェは偉大な思想家です。ニーチェが遺した作品は今もなお輝きを放ち続け、多くの人に読み継がれています。しかし偉大な哲学者、作家にありがちなことですが生前は世間から理解されず不遇の生涯を送ることになりました。

そして彼はほとんど世間に知られることなく、1889年に発狂してしまいます。彼が45歳になる年でした。

ただ、皮肉なことにニーチェは発狂後に一気に有名になっていきます。発狂するまで思索した哲学者ということで世間の注目を引いたのです。ニーチェはその後重度の精神疾患から回復することもなく、1900年に亡くなっています。つまり彼は自分の著作が売れていることも知らずに命を終えていったのでした。そしてさらに驚くべきことにこのニーチェを売り出したのが実の妹だったのでした。

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橋本智津子『ニヒリズムと無ーショーペンハウアー/ニーチェとインド思想の間文化的解明』~ニヒリズムと仏教思想の繋がりを学ぶのにおすすめ

橋本智津子『ニヒリズムと無ーショーペンハウアー/ニーチェとインド思想の間文化的解明』概要と感想~ショーペンハウアー、ニーチェのニヒリズムと仏教思想の繋がりを学ぶのにおすすめ! フリードリヒ・ニーチェ(1844-1900)…

名作の宝庫・シェイクスピア

福田恆存『人間・この劇的なるもの』~シェイクスピア翻訳で有名な劇作家による名著!「個性などというものを信じてはいけない」「人間は必然を求める」

著者の福田恆存はシェイクスピア作品の翻訳で有名で、私もいつもお世話になっています。私は新潮社版のシェイクスピアが好きで格好いいセリフや言葉遣いにいつも痺れています。

この本は1956年に初めて刊行され、今でも重版されている名著中の名著です。現代においてもまったく古さを感じません。

自分とは何か、個性とは何か、自由とは何か。

私たちの根源に迫るおすすめの1冊です。非常におすすめです!ぜひ手に取って頂ければなと思います。

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教養とは何か~読書や知識量で得られるものなのだろうか

今、世の中は「教養ブーム」と言えるかもしれません。

「ビジネスに効く教養」や「人生の役に立つ教養」をわかりやすく紹介する本や情報が大量に出回っています。

ですが、知識をたくさん得ることで自分が教養のある人間だと思い込み、他者を下に見るようになってはそれこそ本末転倒なことになってしまうのではないでしょうか。人としてあなたはどう生きるか、何をしているのか、その生き様が問われるのが教養なのではないかと感じました。

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『西尾幹二全集第五巻 光と断崖ー最晩年のニーチェ』~発狂直前のニーチェの思想を解説したおすすめ作品 

本書の中で個人的に驚きだったのがドストエフスキーとの関係です。他の参考書ではニーチェがドストエフスキーの後期作品を読んでいたかは不明だとされていたのですが、西尾氏によると『悪霊』や『白痴』の影響が『アンチクリスト』には明らかに反映されていて、資料的な裏付けもしっかりとなされているとのことでした。

『偶像の黄昏』、『アンチキリスト』、『この人を見よ』をもっと深く知りたい方にはこの本は非常に役に立つと思います。これらの作品に込められた意味や制作の背景がくっきりと見えてきます。

また、ニーチェの問題作『権力への意志』についての詳細な解説もこの本の魅力の一つです。『権力への意志』がどのように成立したのか、そしてその問題点はどこにあるのかということが詳細に語られます。

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西尾幹二『ニーチェ 第二部』~大学教授、看護兵、高校教師としてのニーチェの意外な素顔を知れるおすすめ作品!

西尾幹二の『ニーチェ 第二部』では様々なニーチェの姿をもっともっと詳しく知ることができます。大学教授となったニーチェの生活、ワーグナーとの運命的な出会い、デビュー作『悲劇の誕生』の成立過程が詳細に語られます。今回の記事ではその一部を紹介しましたが、興味深い事実が満載です。

非常におすすめな1冊です。ニーチェに対する見方が変わるほどの作品です。ぜひ手に取って頂ければと思います。

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なぜニーチェは難しいのか、人によって解釈が異なるのか~ドストエフスキーとの共通点

なぜニーチェは難しいのか、人によって解釈が異なるのか 前回の記事では西尾幹二の『ニーチェ 第一部』をご紹介しましたが、今回はその本の中でも特に気になった箇所があったので皆さんと一緒に考えていきたいと思います。 タイトルに…

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西尾幹二『ニーチェ 第一部』~哲学者になる前の若きニーチェの姿を知れるおすすめ伝記

この本ではかなり丁寧に当時の時代背景やニーチェの生活が振り返られていきます。

この本は全367ページとなかなかな分量ですが、この本ではニーチェが学者となる前の青年時代、1865年までのニーチェが書かれます。つまり、21歳までのニーチェを丸一冊かけてじっくりと見ていくことになります。

単にニーチェの生涯を学ぶだけでなくそこから私たちが何を思うのか、それを体感していく読書体験になりました。知的興奮を味わえる1冊です。とてもおすすめな作品です。