ゾラ『獣人』あらすじと感想~『罪と罰』にインスパイアされたゾラの鉄道サスペンス!殺人は理性か本能か!
理性で殺したラスコーリニコフ、本能で殺したジャック。
この二人の主人公の対比はドストエフスキーとゾラの人間観の違いを最も明確に示しているのではないでしょうか。
『罪と罰』にはまった人ならぜひともこちらの作品も読んで頂けたらなと思います。
バルザックの『ゴリオ爺さん』(以下の記事参照)と共におすすめしたい一冊です。
理性で殺したラスコーリニコフ、本能で殺したジャック。
この二人の主人公の対比はドストエフスキーとゾラの人間観の違いを最も明確に示しているのではないでしょうか。
『罪と罰』にはまった人ならぜひともこちらの作品も読んで頂けたらなと思います。
バルザックの『ゴリオ爺さん』(以下の記事参照)と共におすすめしたい一冊です。
正直に申しまして、この作品は「ルーゴン=マッカール叢書」20巻中、読んでいて最も困惑する作品でした。
と、言いますのも、アンジェリックの夢想があまりにエキセントリックであり、しかもその夢想に沿う形で本当に王子様が現れて恋に落ち、さらにさらに王子様が駆け落ちまで申し込んでくるという、ゾラらしからぬファンタジー要素があまりに多い筋書きだったからなのです。
私にとってよくも悪くもこの作品は不思議なインパクトを与える作品でした。
『大地』はフランスの地方農民の生活を描いた作品です。そしてこれまで見てきた作品からわかりますように、フランスは急速な経済発展を迎え、『ボヌール・デ・ダム百貨店』で描かれたように人々のライフスタイルが変わっていく時代でした。
この小説は読んでいて辛かったです。あまりの生々しさ、そして悲惨さ、救いのなさに何度ため息をつかされたことか…
ゾラはそれだけ農村が抱える問題を真摯に、ストレートに表現したかったということなのでしょう。名作と言われるだけの価値は十分すぎるほどあると思います。
この物語はゾラの自伝的な小説でもあります。主人公の画家クロードと親友の小説家サンドーズの関係はまさしく印象派画家セザンヌとゾラの関係を彷彿させます。
セザンヌと言えば印象派の巨匠です。なんとゾラは彼と15歳の時から学校の同級生で、パリに出てからも互いに深い交流を持ち続けていたのです。印象派の発展のためにゾラは美術評論を数多く書き、ゾラ自身も天才画家セザンヌから多くのことを学んでいたのでありました。いわば二人は芸術界を切り開く盟友だったのです。
芸術家の生みの苦しみを知れる名著です!
『ジェルミナール』では虐げられる労働者と、得体の知れない株式支配の実態、そして暴走していく社会主義思想の成れの果てが描かれています。
社会主義思想と聞くとややこしそうな感じはしますが、この作品は哲学書でも専門書でもありません。ゾラは人々の物語を通してその実際の内容を語るので非常にわかりやすく社会主義思想をストーリーに織り込んでいます。
難しい専門書を読むよりずっとわかりやすく、面白く学ぶことができることかと思います。
概要とあらすじでは主人公の少女ポリーヌがダメ人間ラザールに恋をしてしまう可哀そうな物語とお話ししましたが、そこはゾラ師匠。単なる優しい女の子の残念な恋愛で終わらせません。
実はゾラはラザールに当時大流行していたショーペンハウアー的なペシミズム(悲観主義、厭世主義)を意図的にまとわせ、それに対置する形で生きる歓びを体現するポリーヌを立たせているのです。
そうしてゾラは当時大流行していたペシミズムに対する反論を述べようとしているのでした
この作品はフランス文学者鹿島茂氏の『 デパートを発明した夫婦』 で参考にされている物語です。
ゾラは現場での取材を重要視した作家で、この小説の執筆に際しても実際にボン・マルシェやルーブルなどのデパートに出掛け長期取材をしていたそうです。
この本を読むことは私たちが生きる現代社会の成り立ちを知る手助けになります。
もはや街の顔であり、私たちが日常的にお世話になっているデパートや大型ショッピングセンターの起源がここにあります。
非常におすすめな作品です。
この作品は『ボヌール・デ・ダム百貨店』の物語が始まる前の前史を描いています。
主人公のオクターヴ・ムーレは美男子で女性にモテるプレイボーイです。そして彼がやってきたアパートでは多くのブルジョワが住んでいてその奥様方と関係を持ち始めます。
そうした関係はもちろん危険な火遊びで、彼は何度も痛い目に遭います。
ですがそうした女性関係を通してオクターヴは女性を学び、大型商店を営むというかねてからの野望に突き進もうとしていきます。
ゾラの代表作『ナナ』。フランス帝政の腐敗ぶり、当時の演劇界やメディア業界の舞台裏、娼婦たちの生活など華やかで淫蕩に満ちた世界をゾラはこの小説で描いています。
欲望を「食べ物」に絶妙に象徴して描いた作品が『パリの胃袋』であるとするならば、『ナナ』はど直球で性的な欲望を描いた作品と言うことができるでしょう。
ゾラ得意の映画的な描写も健在で、読みやすいことこの上なしです。
世界文学屈指の名作に数えられる『ナナ』。ぜひぜひおすすめしたい作品です。
「平凡な女の、生涯一度だけの情熱が、女の心理を緻密にたどるゾラの描写で、いま甦る!
夕暮のパリ、嵐のパリ、夜景のパリ、―心情をなぞるような都市の描写でも有名な、印象派絵画を思わせる悲恋の物語」
前作の『居酒屋』はあまりに強烈な作品だったため、ゾラ自身にも大きな精神的負担がのしかかることになりました。そこで心機一転して甘く叙情的な世界観を描き出そうとして生まれた作品がこちらになります。(それでもかなりの狂気、毒気が描かれていますが・・・)