ドストエフスキー資料データベース

いまわしい話ドストエフスキー作品

ドストエフスキー『いまわしい話』あらすじと感想~その優しさは他人には迷惑きわまりないものなのかもしれない。

様々な参考書や解説を読んでいると、『地下室の手記』以前のドストエフスキーは人道主義(ヒューマニズム)の作家であると解説されますが、初めてドストエフスキー全集を読み始めた時にはその意味がなかなかわかりませんでした。

しかし全集を読み進めてきてこの作品とぶつかった時に、「おお!なるほど!」とすっかりそのもやもやが晴れることになりました。

ドストエフスキーの人道主義を知る上で非常に参考になる作品です。

虐げられた人びとドストエフスキー作品

ドストエフスキー『虐げられた人びと』あらすじと感想~いびつな三角関係はどこへ向かう?

私個人の感想ですがこの作品は一言で言えば、「歯がゆい!」に尽きます。

典型的な「いい人」、主人公のワーニャが幼馴染で才色兼備のナターシャに恋をしています。しかしナターシャはあろうことか典型的なダメ男に恋をし、家族まで捨てて破滅にまっしぐら。

ワーニャはそんなナターシャを見捨てられず、あれやこれやと世話をしたり、恋敵との取り持ちまでさせられる始末。

「いい人」の悲哀がこれでもかと描かれています。

師の家の記録ドストエフスキー作品

ドストエフスキー『死の家の記録』あらすじと感想~シベリア流刑での極限生活を描いた傑作!

この作品は心理探究の怪物であるドストエフスキーが、シベリアの監獄という極限状況の中、常人ならざる囚人たちと共に生活し、間近で彼らを観察した手記なのですから面白くないわけがありません。あのトルストイやツルゲーネフが絶賛するように、今作の情景描写はまるで映画を見ているかのようにリアルに、そして臨場感たっぷりで描かれています。
この小説はドストエフスキー作品の中で『罪と罰』と並んでその入り口としておすすめな作品です。

ドストエフスキードストエフスキー作品

ドストエフスキー『叔父の夢』、『ステパンチコヴォ村とその住人』あらすじ・感想

今回紹介する2作品はドストエフスキーが4年間のシベリア流刑を終え、セミパランチスクでの一兵卒として勤務していた時代に書かれたものです。

セミパランチスクは現在ではカザフスタン北部にあたり、ドストエフスキーが滞在した当時、ロシアの国境警備隊がここに駐屯していました。

ドストエフスキーはシベリア流刑の後、すぐにサンクトペテルブルクに帰ることは許されず、そのまま辺境の地で国境警備隊としての任を与えられることになっていました

ドストエフスキー初期作品ドストエフスキー作品

ドストエフスキー初期作品あらすじまとめ

この記事では1846年から1849年のシベリア流刑までに書かれた作品のあらすじを簡潔にまとめていきます。

ドストエフスキーといえば『罪と罰』や『悪霊』、『カラマーゾフの兄弟』など、長編のイメージが強いですが実はその作家人生の初期には多くの短編を書いていました。

ですが、デビュー作『貧しき人びと』の後の彼は苦悩が続きます。文壇からは酷評続きでヒット作と呼べるようなものがまったく出てこないのです。

これから紹介していく初期短編はドストエフスキーのそんな苦悩の時代の作品になります。

二重人格ドストエフスキー作品

ドストエフスキー『二重人格(分身)』あらすじと感想~自意識過剰男が狂気にまっしぐら。私のお気に入り作品

個人的には私はこの作品が大好きです。

初めて読んだ時は新ゴリャートキンの存在に混乱してしまいましたが、もう一度じっくり読んでいくと主人公の旧ゴリャートキンにとても感情移入してしまいました。

彼はたしかに不器用で世渡り下手で卑屈な言動を繰り返すのですが、世渡り上手なイケてる人間にはない魅力が彼にはあるのです。

私はそうした旧ゴリャートキンに共感を覚えます。

『二重人格』は『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』といった長編作品とはまた違った魅力がいっぱいの作品です。

ドストエフスキー作品

ドストエフスキーのデビュー作『貧しき人びと』あらすじと感想~貧しくも美しい心を持つ2人の恋の物語 

この作品は中編小説ということでドストエフスキーの五大長編と比べると手頃で手に取りやすい作品であるのですが、ドストエフスキーの入門としていきなりこれを読むと理解するのはなかなか難しいかもしれません。

ある程度の前知識が必要とされますが、逆に言えばそれさえあればドストエフスキーの貧しい人や虐げられた人への優しさ、愛情がこの作品では感じられます。

ドストエフスキーの原点とも言える作品です。

おすすめキリスト教ドストエフスキーとキリスト教

ドストエフスキーとキリスト教のおすすめ解説書一覧~小説に込められたドストエフスキーの宗教観とは

ドストエフスキーとキリスト教は切っても切れない関係です。

キリスト教と言えば私たちはカトリックやプロテスタントをイメージしてしまいがちですが、ドストエフスキーが信仰したのはロシア正教というものでした。

そうした背景を知った上でドストエフスキーを読むと、それまで見てきたものとは全く違った小説の世界観が見えてきます。

キリスト教を知ることはドストエフスキーを楽しむ上で非常に役に立ちます。

キリスト教ドストエフスキーとキリスト教

フスト・ゴンサレス『キリスト教史』~キリスト教の歴史の大枠を学ぶのにおすすめの参考書!

この本では「キリスト教こそ絶対に正しくて、異教徒は間違っている」というニュアンスはまず存在していません。歴史的にその出来事はなぜ起こったのかということをできるだけ客観的に見ていこうという視点が感じられます。

また、この本はそもそも読み物としてとても面白いです。キリスト教史の教科書というと、固くて難しい本をイメージしてしまいがちですが、フスト・ゴンサレス『キリスト教史』は一味も二味も違います。

思想ドストエフスキーとキリスト教

P・フォーキン「ドストエフスキーの「信仰告白」からみた『カラマーゾフの兄弟』」岩波書店『思想』2020年6月号より

著者のF・フォーキン氏は1965年、カリーニングラードに生まれ、カリーニングラード大学を卒業し現在はロシア国立文学博物館研究員であると同時にモスクワ・ドストエフスキー博物館の主任を務めています。

この論文の特徴はドストエフスキー最後の作品『カラマーゾフの兄弟』をドストエフスキーの信仰告白であると捉えている点にあります。