仏教コラム+α

ディズニーランドの社会学夢の国ディズニーランド研究

荒井克弥『ディズニーランドの社会学 脱ディズニー化するTDR』~日本的なディズニー受容を考察する刺激的な一冊!

この本は「ここがすごいよディズニーランド」的なことを述べていく本とは違います。あくまで社会学的に、ディズニーランドという現象を見ていきます。

なぜ東京ディズニーランドは本家本元とは違う独自の路線を取るようになったのか。そしてなぜ別路線を取ったにも関わらず営業利益が伸び続けているのかということを様々な視点から考察していきます。これは面白い!

特に、ダッフィー誕生のエピソードは必見です。私もずっとダッフィーの存在が謎だったのですが、この本を読んで「おぉ!なるほど!」と思わず唸ってしまいました。まさかこんな背景があったなんてと驚きました。まさにここにも日本独自の事情があったことに驚かされます。

創造の狂気夢の国ディズニーランド研究

ニール・ゲイブラー『創造の狂気 ウォルト・ディズニー』~中立的なおすすめディズニー伝記!

本書はミッキーマウスの生みの親ウォルト・ディズニーのおすすめ伝記です。

本書の特徴は何と言ってもその中立性にあります。上の本紹介にもありますようにこの本は過度にウォルトを賛美するのでも批判するのでもありません。あくまで中立という姿勢で叙述されます。

この中立という立場は言われるまでもなく当たり前のことと思われるかもしれませんがウォルトほどの巨人ともなるとなかなかそうはいきません。ディズニー側からはもはや神格化され大本営発表的な情報が出され、そうかと思えば政治的、思想的なスタンスからウォルトを悪魔のような人物としてこき下ろすということが多々あったのでありました。

本書『創造の狂気 ウォルト・ディズニー』は様々な視点からディズニーを考えていけるおすすめの一冊です。

ディズニーランド夢の国ディズニーランド研究

R・スノー『ディズニーランド 世界最強のエンターテインメントが生まれるまで』~夢の国誕生の裏側を知れるおすすめ本!

この本は単にディズニーを礼賛するのでもなく、その逆に暴露や誹謗中傷するものでもありません。帯に「今こそ読みたい壮大ノンフィクション」と謳われるように、ディズニーランド誕生と開業後の展開をドキュメンタリー風に見ていくことになります。

ウォルト・ディズニーの超人的な想像力、働きぶりはもちろん、彼の無謀な挑戦を現実化させた数多くの人々の奮闘がこの本では描かれます。正直申しまして、ウォルトをはじめこの本で語られるディズニーランド建設の現場は常軌を逸しています。

しかも笑ってしまうほどのドタバタ、無茶な計画でこのテーマパークは作られていました。

そしてディズニーランド開業という栄光の一日はディズニー側にとって「暗黒の日曜日」でもあったのですが、この日のエピソードは本書のハイライトと言ってもよいでしょう。ものすごく面白いです。

ディズニーの芸術夢の国ディズニーランド研究

クリストファー・フィンチ『ディズニーの芸術』~ディズニー作品の歴史を楽しく学べるおすすめ解説書!

本作『ディズニーの芸術』はディズニー作品の歴史を知れるおすすめ作品です。

まず、何と言ってもイラストや写真、資料がとにかく豊富!見ているだけで楽しい一冊です。

そしてこの本を読んでいると「えっ!そうだったの!?」と驚くことがどんどん出てきます。今まで観てきたディズニー作品がいかにとてつもない「芸術作品」だったのかがよくわかります。

そもそもウォルト・ディズニーその人のことすら私たちはほとんど知らないですよね。私もそうでした。彼が1901年生まれということも全く知りませんでしたし、関心すらありませんでした。

ですがディズニー作品にはやはり彼の生涯や哲学がふんだんに反映されています。この本を読めばディズニー作品の見え方がまるで変わってきます。

蜘蛛の糸三島由紀夫と日本文学

芥川龍之介『蜘蛛の糸』あらすじと感想~仏教童話として有名な名作短編!地獄に垂らされた救いの糸!

『蜘蛛の糸』は芥川龍之介が初めて書いた児童向け文学で、仏教説話としても有名な名作短編です。私も僧侶という仕事柄、この『蜘蛛の糸』のお話を法話や仏教書で見聞きすることは数多くありますが、このお話はお寺関係という枠を超えて日本人全体に親しまれてきた作品ではないでしょうか。

そして本書巻末解説では『蜘蛛の糸』制作についての詳しい解説が説かれていたのですが、これが私にとってかなりの驚きでした。簡単に要点をまとめると、⑴『蜘蛛の糸』が元々仏教由来なのかどうかはわからないということ、⑵この作品がドストエフスキーやトルストイとも関係があるという2点があげられます。この記事ではこのことについても詳しく見ていきます。

砂の女三島由紀夫と日本文学

阿部公房『砂の女』あらすじと感想~国際的にも高く評価された名作!カフカ的な世界観と国際的な文学とは

本作『砂の女』は20カ国以上の国に翻訳された国際的にも高く評価された名作です。

ストーリー自体はあくまでシンプル!ふと迷い込んだ砂丘で、理不尽にも穴の中の家に閉じ込められた主人公。砂の壁に囲まれた穴から脱出すべく奮闘するも・・・という物語です。

前回の記事で紹介した『箱男』はストーリーが難解で、問題作と言われるほどの奇作でしたが今作『砂の女』は非常に読みやすいです。

ただ、阿部公房らしい不条理な世界観は健在です。

文学の国際性ということを考えることになったこの作品は私にとっても貴重な読書となりました。これは楽しい読書でした。

箱男三島由紀夫と日本文学

阿部公房『箱男』あらすじと感想~箱をかぶればめくるめく世界?MGSの小島秀夫監督にも大きな影響!

今作『箱男』は何とも形容しがたい刺激的な作品です。

まず、そもそもタイトルが謎です。『箱男』って何だ?

私は阿部公房の『箱男』という作品について、これまで名前だけは知ってはいたのでありますが今回いよいよ実際に読んでみることになりました。

私はてっきりチェーホフの『箱にはいった男』のイメージで、何か観念的な物語かと思っていたのですが読んでみてびっくり、物理的に本当に箱をかぶった男の話だったとは!

ぜひぜひおすすめしたい作品です。三島由紀夫を学ぶ流れで読んでみた作品でしたが、その作風の違いなども感じられてとても楽しい読書になりました。

人間失格三島由紀夫と日本文学

太宰治『人間失格』あらすじと感想~ドストエフスキーは罪と罰を対義語として書いたのか?太宰最期の問いに思う

前回の記事で紹介した『斜陽』のように、『人間失格』も読者に強烈な影響を与えることになりました。太宰の文章は読者ひとりひとりに「これこそ私だ!」と思わせる独特の魔力があります。主人公のナイーブなあり方に共感する若者が太宰文学に心酔することになりました。そんな彼らを指した「斜陽族」という言葉が生まれたほどです。

そんな感化力の強い太宰作品の中でもとりわけ魔術的な力が強い作品こそこの『人間失格』です。

そして私個人としてはやはりドストエフスキーと『人間失格』とのつながりがとても興味深かったです。

と言いますのも、この作品の後半ではまさにドストエフスキーに関する議論が挿入され、そこで『罪と罰』について語られていたからでありました。

斜陽三島由紀夫と日本文学

太宰治『斜陽』あらすじと感想~破滅の美学。斜陽族を生んだ名作。三島由紀夫の太宰嫌いを決定づけた作品

本作『斜陽』は太宰治の代表作であり、彼の作品に心酔する若者を指した「斜陽族」という言葉が生まれるほどの社会現象ともなりました。

「『斜陽』は戦争前に裕福だった人々の戦後の没落を描いたものだが、美しく滅びる姿への感動がそこはかとなく伝わってくる」と『文豪ナビ 太宰治』に書かれているように、本作は太宰治らしい破滅の文学です。

また、本書巻末の解説でもロシアの文豪チェーホフの『桜の園』とも関係が深いことが指摘されていましたが、まさにその通り。特に主要人物の一人かず子とその母をめぐる物語はまさに没落貴族の悲哀がこもっています。

ただ、私にとってこの小説は太宰の代表作ということやチェーホフとの関係よりも、三島由紀夫との因縁という点から非常に興味深く読むことになりました。この記事ではその三島との関係をお話ししていきます。

走れメロス三島由紀夫と日本文学

太宰治『走れメロス』あらすじと感想~教科書でもお馴染みの名作を大人になってから読んでみると・・・!

『走れメロス』はたしかに明るい作品です。しかし、後の太宰の人生を考えるとどこかその明るさに悲しさを感じてしまう私がいます。『走れメロス』の理想的な世界観があまりに美しいが故に、太宰の破滅がそこに予感されるような気がするのです。

これは大人になってから人生の色々なことを知っていくにつれてもっと感じていくようなものなのかもしれません。人生の酸いも甘いも知った上でこの明るい名作が投げかけてくるものを感じていく。これは実に贅沢な読書体験です。大人だからこそ楽しめる『走れメロス』なのかもしれません。