2022年12月

名作の宝庫・シェイクスピア

シェイクスピア『アテネのタイモン』あらすじと感想~金の切れ目は縁の切れ目。お人よしの富豪の悲惨な転落劇

『アテネのタイモン』は紀元前五世紀頃に実際に存在していたアテネの人間嫌いの市民ティノモスをモデルにして書かれた作品です。

物語の筋としてはシンプルです。シンプルすぎると言ってもいいでしょう。そして実際に読んでみて思ったのですが、たしかに本紹介で問題作と言われているのもわかるような気がしました。

問題作として扱われるこの作品ではありますが、シェイクスピアの全体像を考えるためにもこの作品を読むことができてよかったなと感じています。

秋に記す夏の印象~パリ・ジョージアの旅

(13)マルモッタン・モネ美術館でモネの『印象・日の出』を鑑賞~私がパリで最も好きになった絵画

モネの『印象・日の出』は本当に不思議な絵です。全体がぼんやりしているものの、それが心地よい。夕陽とその光の反射の描写はまさに天下一品だと思います。なぜか引き込まれる不思議な魅力がこの絵にはあります。これ以上はうまく言葉にできません。

私がパリで最も好きになった絵画は間違いなくこの作品です。

ありがたいことにこの美術館はルーブルやオルセーと違ってそれほど混雑はしません。だからゆっくりと心行くまで好きな作品に没頭できます。ぜひこの美術館もおすすめしたいです。そして『印象・日の出』をじっくりと堪能していた頂ければ何よりです。

ドストエフスキーとキリスト教

高橋保行『迫害下のロシア教会―無神論国家における正教の70年』~ソ連時代のキリスト教はどのような状態だったのか

ソ連時代のことは現代を生きる私たちにはなかなかイメージしにくいかもしれません。同時代を生きていた人にとっても情報が制限されていたため限られた範囲でしかその実態を知ることができませんでした。

そんな中ソ連政権下でタブー視されていた宗教については特に秘密にされていた事柄だと思います。

ソ連が崩壊した今だからこそ知ることができるソ連とロシア正教の関わり。

そのことを学べるこの本は非常に貴重な一冊です。

ドストエフスキーを知る上でもこの本は非常に大きな意味がある作品だと思います。

秋に記す夏の印象~パリ・ジョージアの旅

(12)ルーブルの至宝『サモトラケのニケ』が素晴らしすぎた件について~ぜひおすすめしたいヘレニズム彫刻の傑作!

ルーブルの至宝『サモトラケのニケ』。 この作品は1863年にエーゲ海のサモトラケ島で発見された彫刻で、「ニケ」というのは「女神」を意味する言葉です。 そしてこのニケはヘレニズム期の紀元前190年頃に制作されたと考えられています。 この彫刻は私がパリで最も強烈な印象を受けた芸術作品になりました。あまりの美しさに完全に魅了されてしまいました。 この記事ではそんなニケの魅力についてお話ししていきます。

ドストエフスキー論

G・ルカーチ『トルストイとドストイェフスキイ』~「ドストエフスキーは答えではなく問いを与える作家である」

「文学者の任務は答えを与えることでなく、問いを与えるところにある」とルカーチは述べます。そしてそれに最も成功した人物の一人としてドストエフスキーを挙げるのでした。

たしかにドストエフスキーは答えを与えてくれません。読者を混沌に叩き込むがごとく複雑怪奇な世界に私たちを引きずり込みます。

ですがそれこそドストエフスキーの最大の魅力でもあります。

訳者あとがきにもありますようにたしかに問題がある作品であるかもしれませんが、この作品で説かれていることはドストエフスキーをまた違った視点から見られるいい機会になったのではないかと思います。

秋に記す夏の印象~パリ・ジョージアの旅

(11)ルーブル美術館でドストエフスキーが愛した理想風景画家クロード・ロランを発見。同時代の天才プッサンと共にご紹介

パリといえばやはりルーブル美術館を思い浮かべる方も多いと思います。

ですが、ドストエフスキーに関心を持っている私にとっては実はこの美術館はノーマーク。正直、特にこれといってものすごく見たい作品があるというわけでもなかったのです。「有名なルーブルだし、せっかくだし行っておきますか」くらいのものだったのでした。

しかし実際にここを訪ねてみて、そんな軽率なことを思っていた自分を大いに恥じることになりました。この美術館はやはり評価されるべくして評価されている素晴らしい美術館でした。今さら私がこんなことを言うのもおこがましい話ではありますがあえて言いましょう。「やっぱりルーブルはすごかった!」と

ドストエフスキーとキリスト教

エフドキーモフ『ロシア思想におけるキリスト』~『悪霊』ティーホン主教のモデルになったザドンスクの聖ティーホンとは

この作品はタイトルにも書きましたようにロシアにおけるキリスト教の歴史や思想の概略を示してくれる作品となっています。

そしてこの本で一番ありがたかったのはザドーンスクの聖ティーホンについての解説の存在です。

この人物はドストエフスキーの『悪霊』に出てくる主教ティーホンと『カラマーゾフの兄弟』のゾシマ長老の造形に大きな影響を与えた人物として知られています。

この作品ではドストエフスキーについても語られますしトルストイやゴーゴリなどロシア文学を代表する人物達とキリスト教の関係を知ることができます。

秋に記す夏の印象~パリ・ジョージアの旅

(10)『オペラ座の怪人』でお馴染み!パリのオペラ・ガルニエへ~ファントムの5番ボックス席も発見!

パリといえばやはりオペラ座。この記事ではそんなオペラ座ことオペラ・ガルニエについてお話ししていきます。

『オペラ座の怪人』ファンには間違いなくたまらない場所です。この記事ではあのファントムのボックス席についてもお話ししていきます。

もちろん、『オペラ座の怪人』に詳しくなくともこの見事なナポレオン三世様式は必見です

これはパリ観光の必須ポイントとして間違いありません。ぜひおすすめしたいスポットです。

ドストエフスキーとキリスト教

ローテル『無名の巡礼者 あるロシア人巡礼の手記』~ドストエフスキーに大きな影響を与えた巡礼の精神を知るのにおすすめの作品

この本はドストエフスキーやトルストイにも大きな影響を与えた「ロシアの巡礼」について知るためにうってつけの作品となっています。この本が初めて出たのはドストエフスキーが亡くなった1881年より数年後ですので直接彼がこれを読んでいたわけではありませんが、当時ロシアにいた巡礼者がどのような教えの下生きていたのかということを知ることができます。

私はこの作品を読んで何度も驚かされました。

この本で語られる祈りや瞑想の方法が仏教で説かれることとそっくりな部分がいくつもあったのです。信仰と祈りについて学ぶのに素晴らしい作品です。ぜひおすすめしたい一冊です。

秋に記す夏の印象~パリ・ジョージアの旅

(9)サクレクール寺院からパリを一望~ゾラ後期の傑作小説『パリ』ゆかりのモンマルトルの丘に立つ巨大な教会

前回の記事ではエミール・ゾラの『ルーゴン・マッカール叢書』ゆかりの地をご紹介しました。

そして今回の記事では『ルーゴン・マッカール叢書』を書き上げたゾラが満を持して執筆した「三都市双書」の最終巻『パリ』の主要舞台となったサクレクール寺院をご紹介していきます。

パリを一望できる絶景スポットとして有名なこの教会ですが、ゾラファンからするとまったく異なる意味合いを持った場所となります。この教会に対してゾラは何を思ったのか、そのことをこの記事で紹介していきます。