2022年7月

産業革命とイギリス・ヨーロッパ社会

サイモン・フォーティー『産業革命歴史図鑑 100の発明と技術革新』~産業革命の歴史と発明品を学ぶのにおすすめ

この本の特徴は何といっても資料の豊富さです。書名にもありますように、100の発明が写真、イラストと共にわかりやすく解説されます。

産業革命について書かれた本が意外と少ない中で、この本は非常にありがたい作品です。タイトルに「歴史図鑑」とありますように、写真やイラストが豊富なのも素晴らしい点です。解説もとてもわかりやすいです。

産業革命の歴史を学ぶ入門書としてこれはかなりおすすめな一冊です。

産業革命とイギリス・ヨーロッパ社会

カール・B・フレイ『テクノロジーの世界経済史』~産業革命の歴史と社会のつながりを学ぶのにおすすめ!

私がこの本を手に取ったのは、マルクスを学ぶ上で産業革命の歴史と現代に至るテクノロジーの歴史を知りたいと思ったからでした。

この本ではなぜイギリスで産業革命が起きたのか、そしてそれにより社会はどのように変わっていったのかを知ることができます。

マルクスとエンゲルスは、機械化が続けば労働者は貧しいままだという理論を述べました。

たしかに彼らが生きていた時代にはそうした現象が見られていましたが、現実にはその理論は間違っていたと著者は述べます。

この伝記は産業革命とテクノロジーの歴史を知るのに非常におすすめな1冊となっています。

マルクス・エンゲルス著作と関連作品

『人類の知的遺産49 バクーニン』~ロシアの革命家バクーニンの生涯を知るのにおすすめの伝記

前回の記事で紹介したゲルツェンと同じく、マルクスを知るために同時代の革命家たちのことを知ろうということでこの本を取りました。バクーニンもマルクス伝記を読めば必ず出てきますし、ドストエフスキー伝にも出てくる人物です。

バクーニンはロシアの大貴族の家に生まれました。前回紹介したゲルツェンもそうでした。19世紀ロシアを代表する革命家の二人が共に大貴族の息子という事実は驚きでした。ちなみに1917年のロシア革命の立役者になるレーニンも貴族の生まれです。

とにかくぶっ飛んだ強烈な個性を目の当たりにすることになります。

この伝記もとても面白かったです。この本もおすすめです!

マルクス・エンゲルス著作と関連作品

長縄光男『評伝ゲルツェン』~おすすめ伝記!ロシアの革命家の波乱の人生とは

ゲルツェンはドストエフスキーやツルゲーネフなど、ロシアの文豪のことを調べていると必ず出てくる人物でありますし、今更新を続けているマルクスにも関係のある人物です。

この本を読むと意外な事実が驚くほど出てきます。革命家ゲルツェンがとてつもない大金持ちで、その資産運用をロスチャイルドに委託していたという事実も出てきます。これには私もびっくりでした。人間としても危険な革命家というわけではなく、あくまで穏健で理性的な人だったということも明らかになります。

ぜひぜひおすすめしたい1冊です。

マルクス・エンゲルス著作と関連作品

『アウグスティヌス『神の国』を読む―その構想と神学』~マルクスの歴史観にもつながるキリスト教教父の思想とは

ローマ帝国の崩壊のきっかけとなる蛮族の侵入とアウグスティヌスの『神の国』が関係しているというのはとても驚きでした。

そしてアウグスティヌスが歴史を「神の永遠の計画が実現される歩み」であるとしている点は非常に重要です。これはまさしくヘーゲルの歴史観とつながってくるところです。マルクスも神ではありませんがそうした歴史観に非常に影響を受けています。

この本を読むことでヘーゲル、マルクスがいかにプラトンやアウグスティヌスに影響を受けていたかがよくわかります。これは非常に興味深い読書になりました

マルクス・エンゲルス著作と関連作品

プラトン『ソクラテスの弁明 クリトン』あらすじと感想~ソクラテス・プラトン師弟と法然・親鸞師弟の類似に驚く・・・

プラトンが『国家』を書いたのは、尊敬する師ソクラテスが不当に処刑されてしまったことに対する反発からでした。

そしてそのソクラテスがなぜ処刑されねばならなかったのかについて書かれているのがこの『ソクラテスの弁明』という作品です。

親鸞自身もプラトンと同じように、尊敬する師が理不尽にも処罰を受けなければならないのを身をもって体感しています。

親鸞もそうした理不尽に反論するために主著『教行信証』を書いたという側面があります。

プラトンと親鸞が体験した「無念」という共通点が私にはドキッとくるものがありました。

マルクス・エンゲルス著作と関連作品

プラトン『国家』あらすじと感想~エリートによる国家運営の原型。ここからすでに管理社会は始まっていた

私が今回この本を読みたいと思った最大の理由は彼の国家観がユートピア思想の先駆けともいえるものだったという点にあります。

プラトンの『国家』がヨーロッパ人の精神に多大な影響を与え、後のトマス・モアの『ユートピア』につながり、そこからさらに空想的社会主義者たちやマルクス、レーニン、スターリンの世界にも繋がっていくというのは非常に興味深いものがありました。

かつては挫折したこの本ですが、やはり「今読まねばならぬ」という目的意識があると全然違ってきますね。

「目的があること」は読書における良いスパイスであることを実感した読書になりました。

マルクス・エンゲルス著作と関連作品

トマス・モア『ユートピア』あらすじと感想~ユートピアの始まりからすでにディストピア?

「ユートピア」という言葉は現代を生きる私達にも馴染み深い言葉ですが、この言葉を生み出した人物こそこのトマス・モアです。

ユートピアでは一日の仕事は6時間でそれ以上は労働することはありません。ですが仕事を含めた一日のスケジュールが徹底的な監視の下管理されるという、これが私たちの感覚で言えばなかなかのディストピアっぷりなのです。まさに『一九八四年』のビッグブラザーそのものです。

そうです、ユートピア小説はその始まりからしてディストピアだったのです。これは読んでいて驚きでした。

マルクス・エンゲルス著作と関連作品

『じゅうぶん豊かで、貧しい社会』~資本主義と脱成長、環境問題を問う名著!『人新世の資本論』を読んだらこちらもおすすめ

この本は単に「資本主義が悪い」とか、「資本家が搾取するから悪いのだ」という話に終始するのではなく、より思想的、文学的、人間的に深くその根源を追求していきます。これがこの本の大きな特徴であるように思えました。

斎藤幸平著『人新世の資本論』に魅力を感じた方にはぜひ、あえてこの本も読んでみることをおすすめします。読んでいない人にもぜひおすすめしたい面白い本です。資本主義、マルクス主義だけではなく、「人間とは何か」ということも考えていく非常に興味深い作品です。

マルクス・エンゲルス著作と関連作品

『グローバル経済の誕生 貿易が作り変えたこの世界』~世界市場の歴史を知るのに最適な1冊!マルクス主義を学ぶためにも

マルクス主義においては、「資本主義がこんな世界にしたのだ」と述べられることが多いですが、この本を読めばことはそんなに単純ではないことに気づかされます。

たしかに「資本主義」が多大な影響を与えているのは事実です。ですが個々の場においては様々な事情や要因が働いて社会は成り立っています。単に「資本主義がすべて悪いのだ」で止まってしまったら重要なものを見落としてしまいかねません。

世界は複雑に絡み合って成り立っていることをこの本では学べます。

幅広い視野から貿易の歴史を知ることができるおすすめの1冊です。