2022年5月

マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ

(26)『共産党宣言』『資本論』にも大きな影響を与えたエンゲルスの『イギリスにおける労働者階級の状態』

この作品の強みはエンゲルスの実体験に基づいたリアルな語りにありました。

しかもそれだけでなく、彼が夢中になって学んだヘーゲル哲学の素養がそこに生きてきます。

哲学的ジャーナリスト・エンゲルスの特徴がこの作品で示されているのでありました。

労働者の悲惨な生活を描くエンゲルスの筆はもはや作家の域です。

この作品は後のマルクスにも非常に大きな影響を与えました。

マルクスはマルクスのみにあらず。

やはりエンゲルスがいて、二人で共同作業をしたからこそのマルクスなのだなと思わされます。

マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ

(25)マルクスを唸らせたエンゲルスの小論「国民経済学批判大綱」とは

彼はこれまで学んできたヘーゲル哲学を政治経済と結びつけました。この結合が後のマルクス・エンゲルスの思想に決定的な影響を与えることになります。

そして1843年に書かれた「国民経済学批判大綱」は、もう後のマルクスの言葉と言ってもわからないくらいです。

ギムナジウムを中退し、商人見習いをしていた23歳の青年がここまでのものを書き上げたというのは並大抵のことではありません。

マルクスという大天才の陰に隠れて目立たないエンゲルスですが、彼も歴史上とてつもない天才であるのは間違いないのではないでしょうか。

ロシアの巨人トルストイ

トルストイとカフカース(コーカサス)の強いつながり~圧倒的な山岳風景とトルストイの軍隊経験

トルストイは1851年、23歳の年にカフカース(コーカサス。旧グルジア、現ジョージア)を訪れています。

そしてその圧倒的な自然やそこで出会った人々、命を懸けて戦った経験が彼の文学に大きな影響を与えています。

この記事では藤沼貴著『トルストイ』を参考にトルストイの「カフカース体験」を見ていきます。

トルストイの文学や人柄の特徴を見ていくためにもこれらは非常に参考になります。

マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ

(24)エンゲルスの最初の愛人メアリー・バーンズ~エンゲルスに貧民街を案内した女工の存在

エンゲルスがいかに頭が良かろうと、革命思想を奉じようと、彼は工場経営者の御曹司です。

そんな青年が一人で治安の悪い貧民窟に向かうのはさすがに不可能です。そこで彼はそうした危険地帯をよく知る人物と連れ立って実地の見聞を繰り返していたのでした。

そしてその中でも大きな役割を果たしていたのが最初の愛人、メアリー・バーンズだったのです。

この記事ではそんなメアリー・バーンズについてお話ししていきます。

マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ

(23)イギリスの歴史家トーマス・カーライル~エンゲルスがイギリスで尊敬した唯一の知識人

イギリスの歴史家カーライルの思想はマルクスの『共産党宣言』にも非常に強い影響を与えています。

その本の中の有名な一節、(資本主義は)「人間と人間とのあいだに、むきだしの利害以外の、つめたい「現金勘定」以外のどんなきずなをも残さなかった。」という強烈な言葉はマルクスが資本主義の仕組みを痛烈に批判した言葉としてよく知られていますが、実はこの言葉はすでにカーライルがその著作で述べていた言葉だったのです。

この記事ではそんなカーライルとマルクス・エンゲルスについて見ていきます。

ロシアの巨人トルストイ

トルストイ『地主の朝』あらすじと感想~当時の農奴制の実態と農地経営に失敗した若きトルストイの実体験を知れる名作中編

トルストイは1847年にカザン大学を中退し、故郷のヤースナヤ・ポリャーナに帰ってきます。

そして『青年時代』に書かれていたように、己の自己実現のために細かいリストを作成し、その実行に取り掛かったのでした。

そのひとつが今作『地主の朝』で語られるような農地経営だったのです。

ですが、若きトルストイはあっという間にこれに挫折します。

今作ではそんなトルストイの苦い経験を知ることになります。

マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ

(22)イギリスの労働運動「チャーティスト運動」を間近で見るエンゲルス

前回の記事でも紹介しましたが、1830年代まで根強い人気のあったオーエン派の活動も最後には衰退していってしまいます。

その大きな原因となったのがイギリスの新たな政治運動である「チャーティスト運動」でした。

今回の記事ではそんなイギリスの歴史に非常に大きな影響を与えたチャーティスト運動とエンゲルスについてお話ししていきます。

マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ

(21)空想的社会主義者ロバート・オーエン~労働環境の改善に努めたスコットランドの偉大な経営者の存在とは

エンゲルスに空想的社会主義者と呼ばれたロバート・オーエンですが、彼は明らかに他の二人(サン・シモン、フーリエ)とは異質な存在です。

結果的に彼の社会主義は失敗してしまいましたが、その理念や実際の活動は決して空想的なものではありませんでした。

後の記事で改めて紹介しますが彼の自伝では、彼がいかにして社会を変えようとしたかが語られます。19世紀のヨーロッパにおいてここまで労働者のことを考えて実際に動いていた経営者の存在に私は非常に驚かされました。

彼のニューラナークの工場は現在世界遺産にも登録されています。

ロシアの巨人トルストイ

トルストイ『青年時代』あらすじと感想~トルストイの熱烈な理想主義と自己矛盾の葛藤が早くも現れた作品

今作は『幼年時代』『少年時代』『青年時代』と続いたトルストイ自伝三部作の最終作になります。

主人公ニコーレニカの幼年期から青年期までの成長を描いたこの三部作ですが、ニコーレニカにはトルストイ自身の性格がかなり反映されています。

晩年になっても変わらないトルストイの性格がすでにこの作品で見えてきます。トルストイの人柄、特徴を知る上でも非常に重要な作品です。

マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ

(20)憎きブルジョワに自分がなってしまったという矛盾に苦しむ若きエンゲルス

若きエンゲルスは自身の矛盾と向き合わざるをえませんでした。

自身が激烈に攻撃していたブルジョワに自分自身がなっている。

マルクスにもその心情を吐露していますが、彼はこの後もずっとそうした矛盾を抱え続けることになります。

ですが後には開き直って堂々とブルジョワ的な行動をするようにもなります。マルクスもそうです。マルクスもブルジョワ的な生活に憧れ、実際にそうしたお金の使い方をしては金欠に苦しむという、矛盾をはらんだ生活をしていたのでした。