川口葉子『喫茶人かく語りき 言葉で旅する喫茶店』珈琲好きにぜひおすすめしたい一冊!

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川口葉子『喫茶人かく語りき 言葉で旅する喫茶店』概要と感想~珈琲好きにぜひおすすめしたい一冊!

今回ご紹介するのは2021年に実業之日本社より発行された川口葉子著『喫茶人かく語りき 言葉で旅する喫茶店』です。

この本は今年の6月に法話でお世話になりました留萌の永福寺の藤御住職に「上田さんは、喫茶店が好きといってましたからね。本屋さんでもなかなか見かけない本かもしれませんが、深いんです」と最近薦めて頂いた本でした。藤御住職、ありがとうございます!

そしてこの本を一目見て、「おっ、これはいい本の香りが漂っているぞ・・・」と感じました。タイトルもいいですし、本のデザイン、そして帯がまたいい味を出しています。これは期待大です。

では早速この本について見ていきましょう。著者は「はじめに」で次のように述べています。

この20年ほど、全国のカフェや喫茶店を取材しては本を上梓する日々を過ごしてきました。店主の方々にお話をうかがって、心地よく整えられた空間を写真におさめる。それは本当に貴重な時間です。

本書では店主の方々が何気なく、もしくは意志をもって明快なトーンで語ってくださった言葉の中から、とりわけ記憶に残っている名言を集めてお届けします。

一杯のコーヒーと共に過ごす時間のかけがえのなさを教えてくれる言葉。ぴりっとスパイスの効いた言葉。そのカフェならではの流儀を語る言葉。たとえ息苦しさや不安で視界が暗くなっていても、この世界は生きるに値するものだと確信させて、闇に灯りをともしてくれるような言葉。

街角にコーヒーを香らせる達人たちの名言の数々が、あなたの喫茶時間をより楽しくしてくれますように。

最後の章には、古今東西の文筆家たちが綴ったカフェやコーヒーについての文章を集めました。私には小説のページの中で「カフェ」や「コーヒー」という言葉がちょっとだけ太字に見えるのです。何らかのキーワードが念頭にある人なら、似たような経験をしているでしょう。


実業之日本社、川口葉子『喫茶人かく語りき 言葉で旅する喫茶店』 P6

この本は全国津々浦々の名店を珠玉の言葉と共に紹介していく1冊です。

一杯のコーヒーと共に過ごす時間のかけがえのなさを教えてくれる言葉。ぴりっとスパイスの効いた言葉。そのカフェならではの流儀を語る言葉。たとえ息苦しさや不安で視界が暗くなっていても、この世界は生きるに値するものだと確信させて、闇に灯りをともしてくれるような言葉

たしかに、喫茶店でコーヒーを飲むというのは単にコーヒーを飲むというだけではなく、そこに何かしらの意味が生まれてきますよね。そしてその時間が何よりも愛おしい。それにしてもいい言葉ですね。これから先に紹介されているお店や言葉はどんなものなのだろうととても楽しみになります。

著者はさらにこうも述べています。

ひとはなぜカフェの扉を開けるのだろう。

蕎麦屋の引き戸を開けるひとは、香りたつ新そばをつるつるっとたぐるのが目的だ。寿司屋の暖簾をくぐるひとは、頭を新鮮な寿司ネタの映像でいっぱいにしている。でも、カフェの場合はそうではない。

カフェの扉を開けるとき、ひとはかならずしもコーヒーが飲みたいわけではない。シンプルに省略すれば、カフェとはテーブルと椅子と飲みものがあって、すこしの時間が過ごせればいい場所。

カフェのなかで、人々はじつにさまざまなことをしている。(…中略…)

カフェの扉には眼に見えない文字で大きく書かれているのだ。「自由時間」と。
          『カフェの扉を開ける100の理由』2006年発行 (中略)

あなたにとってカフェとは、喫茶店とは、コーヒーとは、どんな存在でしょうか。本書のページには十人十色の答えが書かれています。

実業之日本社、川口葉子『喫茶人かく語りき 言葉で旅する喫茶店』 P 7ー8

たしかに言われてみれば「なるほど」と思いますよね。カフェは自由時間なんだと。だからこそそこに人それぞれの物語が生まれてくるのだと。

「はじめに」の段階ですでにこの本に引き込まれてしまいました。

そしていよいよ本編に入っていきます。

見開きの右のページには店主の言葉。そして左側にはお店の写真と著者によるお店紹介が綴られています。

この本は表紙からも感じられましたが、とてもおしゃれです。と言ってもビカビカする派手なおしゃれではなく、ほのかな明かりに照らされるようなやんわりと優しい雰囲気が感じられます。

よくよく考えてみればカフェってまさしくそういう存在ですよね。どこか包み込んでくれるような、そういうくつろげるような空気感。

読み進めていてどんどん自分がほっこりしてくるのがわかりました。店主の言葉も、著者のお店紹介もすっと入ってきます。紹介されているお店にぜひ行ってみたいなという気持ちがものすごく湧いてきます。この本の雰囲気の良さを画像で紹介できないのがとても残念です。著作権の問題もありますので写真は紹介できませんがぜひ本を手に取って頂き、このほっこりするページを楽しんで頂けたらなと思います。

そして全国のお店が紹介されているのできっと身近なお店があると思います。私の地元の函館のお店も紹介されていました。

また、「はじめに」でも述べられてたように、第五章では文筆に出てくるコーヒーが語られます。コーヒーと文学はやはり切っても切れませんよね。こちらの文章もたまりません。最後までこの本は素晴らしい言葉で溢れています。

やっぱり喫茶店はいいな・・・珈琲って最高だな・・・とほんわかした気分になりました。

最近重い内容の本ばかり読んでいたのでこの本にはものすごく癒されました。これはぜひとも多くの方に読んで頂きたい一冊です。癒し効果抜群です。珈琲好きの方はもちろん、これまでなかなかそういうお店とご縁がなかった方にもぜひ読んで頂きたい1冊です。きっと喫茶店に行きたくなると思います。喫茶店への愛が詰まった名著です。ぜひぜひおすすめです!

以上、「川口葉子『喫茶人かく語りき 言葉で旅する喫茶店』珈琲好きにぜひおすすめしたい一冊!」でした。

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